2022 Fiscal Year Annual Research Report
がん特異的な栄養代謝経路におけるニコチンアミド代謝の機能解析
Project/Area Number |
20K07565
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
上野 将也 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (20334766)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん / 代謝 / 白血病 / ニコチンアミド |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは、栄養素をエネルギーに変え旺盛な増殖能を発揮する一方で、様々なストレスに抗して生き残る機能も兼ね備えている。抗がん剤などのストレス応答には、様々な代謝調節機構が関与しており、がんを根治する治療薬の開発には、がん特有の代謝調節機構を解明する必要がある。我々は、分子標的薬の抵抗性に関わる代謝分子を同定する目的で、栄養センサーであるmTORキナーゼの下流分子を探索した結果、ニコチンアミド代謝関連酵素を同定した。解析の結果、本酵素は、正常組織の機能に必須ではないが、生体内のがん細胞の増殖に極めて重要なこと、さらに、分子標的薬の耐性に関与していることなど、がん特有の機能に重要な役割を果たしていることが判明した。ニコチンアミドは食餌から摂取されるほか、NAD+合成経路からも供給される。がんはNAD+合成を亢進させることで解糖系などを活性化しており、ニコチンアミドはがん特有の代謝調節に関わる栄養素である可能性が示唆された。本研究では、がん組織特異的なニコチンアミドの代謝様式や、がんの増殖・治療抵抗性における本酵素の機能を解析し、がん特有の代謝調節機構の解明を目指した。本研究の実施により、ニコチンアミド代謝経路から、治療抵抗性を誘導する代謝物を同定した。この代謝物は特定のトランスポーターを介してがん細胞内に取り込まれることを明らかにした。このことから、がん細胞の治療抵抗性の獲得には、この代謝物を取り込むことが重要であることが示唆された。これとは対照的に、別の代謝物は、治療抵抗性を抑制する効果がみられ、二つの代謝物が相反する機能を持っていることが示唆された。この代謝物はニコチンアミド代謝経路フラックスに強く依存している。このことから、がん細胞は、ニコチンアミド代謝関連酵素群を制御することで、代謝物の量的バランスを制御し、これが治療抵抗性の獲得に寄与していることが示唆された。
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