2021 Fiscal Year Research-status Report
免疫逃避機構の解除による抗腫瘍効果の機序解明と膵癌微小環境制御に基づく治療法開発
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20K07678
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鬼丸 学 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80529876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寅田 信博 九州大学, 大学病院, 臨床検査技師 (00398075)
千々岩 芳朗 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60783701)
永吉 絹子 九州大学, 大学病院, 助教 (90761015)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵癌 / 免疫逃避 / 免疫チェックポイント / PD-L1 / CTLA4 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、免疫チェックポイント阻害剤は癌免疫療法に目覚ましい飛躍をもたらしたが、非常に予後不良である膵癌においては、他の全身化学療法と同様に免疫チェックポイント阻害剤の有効性は示されていない。そこで我々は、膵癌において、免疫チェックポイントであるPD-L1経路やCTLA-4経路以外の癌免疫応答にブレーキをかけている機序があるのではないかと考え、新たな機序で免疫逃避機構を解除し、抗腫瘍効果を回復させる新規個別化癌免疫療法の開発を目指そうと考えた。 【1.膵癌を含む消化管癌手術検体のシングルセルRNA-Seq解析】膵癌を含む、消化管癌の手術検体を用いて、10X GenomicsのChromiumにてシングルセルRNA-Seqを行い、臓器横断的に消化管癌における免疫逃避機構に主に焦点を当てて、腫瘍内に浸潤する免疫細胞の解析を行った。また、術前化学療法投与前後の免疫チェックポイント分子やT細胞の疲弊化マーカーの経時的変化を観察するため、当院消化管内科とも協力して生検検体のサンプル解析も行った。 【2.免疫細胞を含めた微小環境を再現する3次元培養の確立】切除膵組織より癌細胞と間質細胞、免疫細胞とともに3次元共培養した新たな Patient derived organoid (PDO) mixed immune cellsモデルの作製を進めている。準備としてマウス細胞株で作成を行った。 【3. 膵癌線維芽細胞に発現するPD-L1】膵癌組織中のPD-L1の発現を評価したところ、膵癌間質の線維芽細胞にもPD-L1の発現を認めた。また、手術検体のシングルセル解析においても癌関連線維芽細胞にPD-L1が発現していることを確認した。豊富な間質増生を病理学的特徴とする膵癌において、新たな免疫逃避機構の一つとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は消化管癌の手術検体を中心にシングルセル解析を継続して行った。食道癌では、腫瘍組織中のT細胞やB細胞をはじめ様々な免疫細胞に着目し、化学療法前後の変化を解析し、クラスターの変化、T細胞の疲弊化、B細胞の分化度に変化があることが分かってきた。また胃癌において、単球系MDSCが胃癌における免疫抑制環境を形成していることが分かってきた。 また、PDO mixed immune cellsモデル作成を行うため、まずKPC細胞株、間質細胞および免疫細胞を用いて3次元モデルの作成を行い、免疫微小環境の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌症例については、術前化学療法の有無・種類に分けてシングルセル解析を行う予定であったが、その豊富な間質成分の影響か、シングルセル解析に十分な細胞数が得られない場合がほとんどで、実際に解析可能であった症例はわずかである。対応策として、今年度は比較的十分な細胞数が得られる膵癌以外の消化器癌の解析を行った。今後は、今年度培った解析技術を用いて、すでに公開されている膵癌Public dataや、マウスの移植モデルなどを使用して膵癌微小環境のシングルセル解析を行うことも検討している。 In vivoモデルとして、KPCマウスもしくは、同所移植モデルを用い、免疫チェックポイント阻害剤を投与した際の、腫瘍内の免疫細胞の疲弊化マーカーの発現を検討する。 PDO mixed immune cellsモデルについては、ヒトの癌微小環境をより再現したモデルに近づけるため、モデルの改良を進める。今回新たに着目した癌関連線維芽細胞に発現するPD-L1の機能をオルガノイドモデルを用いてin vitroで検証し、膵癌免疫逃避機構に関わる新たな経路として治療標的となり得るかを解明する。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度はシングルセル受託解析、in vivo実験用の研究器材、試薬に使用予定である。
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