2021 Fiscal Year Research-status Report
モノアミンを介したオリゴデンドロサイト新生の分子基盤と統合失調症病態基盤の解明
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20K07738
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Research Institution | Osaka Kawasaki Rehabilitation University |
Principal Investigator |
大篭 友博 大阪河崎リハビリテーション大学, リハビリテーション学部, 講師 (80584755)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クプリゾン / 海馬 / 感覚運動ゲーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
短期クプリゾン投与マウスを用いて行動学的実験と組織学的な実験を行った。短期クプリゾン投与マウスは不安関連行動の異常や社会性行動の異常、感覚運動ゲーティング機能の異常を認め、従来のとおり統合失調症様の行動異常を示したが、短期記憶の異常は認められなかった。組織学的検討では長期クプリゾン投与マウスの海馬では成熟オリゴデンドロサイトの減少とオリゴデンドロサイト前駆細胞の代償的な増加を認めたが、短期クプリゾン投与マウスでの海馬では、いずれの変化も見られなかった。そこで、短期クプリゾン投与マウスで見られた行動学的異常は、オリゴデンドロサイトにおける病的変化ではなく別の原因を介しているものと考え、その原因の特定を試みた。成体海馬の歯状回では神経新生が起こっており、神経新生を阻害すると情動や記憶などの海馬が関連する生体機能に異常を来す。短期クプリゾン投与マウスの海馬では新生された幼若ニューロンの密度が顕著に低下していた。この原因を探るため神経幹細胞から幼若ニューロンまでの分化ステージを特定できるマーカー分子の組織染色を用いて、神経幹細胞の分化レベルを調べた。その結果、神経幹細胞では炎症に応じて活性化するシグナル分子であるSTAT3の活性化が見られ、細胞分裂マーカーであるKi67やPCNAの密度が低下していた。これらの結果から、短期クプリゾン投与マウスの行動異常の基盤は、海馬内における神経炎症に基づいた神経幹細胞の機能異常による可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クプリゾン投与マウスの脳では、オリゴデンドロサイトの細胞死が起こるが代償的にオリゴデンドロサイトの新生が促進され、オリゴデンドロサイト系譜細胞の全体量として大きな変化がないことが明らかになってきた。これまでに、活性酸素阻害剤であるNACの投与やモノアミン系治療薬であるハロペリドール、リスペリドン等の薬剤を用いた本モデル動物の治療を試みているが、組織学的にはいずれもほとんど効果を認めない。これまでの報告でもこれらの薬剤による治療効果は行動学的にも大きく齟齬があり、改めて海馬神経新生やオリゴデンドロサイト系譜細胞の視点から調べ直したことには大きな意義がある。しかしながら、申請者の所属が計画途中で変更になったこともあり、やや遅れている印象がある。
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Strategy for Future Research Activity |
オリゴデンドロサイトの新生は正常マウスの脳内でも少なからず起きている現象であることから、海馬にモノアミン系神経毒を投与してオリゴデンドロサイト系譜細胞の密度に変化が起こるかどうかを調べる。また、現所属において効率的に進められる研究として、ヒトを対象として感覚情報の変化に応じた運動命令の出力形式を明らかにする研究も推進する。
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Causes of Carryover |
申請者の所属が変更となったことと、所属変更直後からのコロナ禍により出張が著しく制限されたことによる。
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