2021 Fiscal Year Research-status Report
膵癌細胞の浸潤に関与する糖蛋白質の膵癌診断マーカーへの応用
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20K07806
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
吉岡 玲子 高知大学, 医学部附属病院, 特任助教 (60868975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷内 恵介 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (50626869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵癌診断マーカー / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
予後不良の癌の代表である膵癌は早期発見が困難であり、有用な診断マーカーの開発が望まれている。研究代表者は、膵癌細胞の葉状仮足において局所翻訳されることにより浸潤・転移に関わるmRNAを網羅的に同定した。これらの局所翻訳される蛋白質のうち、膜貫通蛋白質である糖蛋白質Aと分泌される糖蛋白質Bを同定した。本研究では、糖蛋白質A, Bが臨床で用いられている膵癌診断マーカーであるCA19-9より優れた診断性能を有することを、①検証目的の臨床試験、および、②我々の樹立したヒト膵癌オルガノイド・モデルマウスを用いたin vivo実験により明確にする。 2021年度の研究成果として、糖蛋白質A, Bおよび糖蛋白質Aと Bの組み合わせの膵癌診断性能を検証する2つの前向き臨床試験(UMIN000021938, UMIN000027906)を実施しており、膵癌血清検体集積を終了した。UMIN000021938試験では、糖蛋白質A, Bおよび糖蛋白質Aと Bの組み合わせがCA19-9に比較して早期膵癌(ステージIIAまでの切除可能膵癌)の診断性能が勝るかを検証する。UMIN000027906試験ではステージIII, IVの進行した膵癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆管・胆嚢癌、大腸癌の患者血清中の糖蛋白質A, B濃度をELISA法により測定する。糖蛋白質A, Bが膵癌特異的な診断マーカーであることを明確にすることを目的とするため、進行した症例を対象とする。2021年度の達成目標であったペア抗体の作製を終えてELISAキットを完成するところまでを順調に進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在実施している2つの前向き臨床試験(UMIN000021938, UMIN000027906)において膵癌血清検体集積および全症例の臨床データの取得を予定通りに終了することができた。 同時に認可申請を目指したELISAシステム構築を産学連携研究により進めている。2021年度までにペア抗体の作製およびELISAキットを完成することを目標としており、順調に開発を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、開発したELISAキットを用いて2つの臨床試験の血清検体中の糖蛋白質A, B濃度を測定して、統計解析を行う。糖蛋白質AとBまたは糖蛋白質Aと Bの組み合わせがCA19-9に勝る膵癌の診断マーカーであることを開発したELISAキットにより検証する。 さらにヒト膵癌オルガノイド・モデルマウスを用いたin vivo実験を実施する。基礎研究としてモデルマウスの血清を用いた研究を進める。研究代表者らは市販されているヒト膵癌細胞株を用いたオルガノイド培養技術を開発し、ヒト膵癌オルガノイドをマウス皮下に移植したモデルを樹立した(ヒト膵癌オルガノイド・モデルマウス)。マウス皮下に形成されたヒト膵癌組織は4週で最大径1cm、6週で最大径1.5cmほどになり、臨床的な膵癌組織と組織構築が極めて類似している。血清CA19-9が移植の3週後から経時的に上昇することを確認できている。移植後5日目から8週目まで経時的に膵癌オルガノイド・モデルマウスの血清を採取して糖蛋白質A, Bの血清中の濃度を測定する。糖蛋白質A, B がヒト膵癌組織の小さい段階からCA19-9に比較して膵癌を診断できるかを明確にする。糖蛋白質A, Bが早期膵癌の診断マーカーに成り得ることの基盤となるin vivo実験データを得る。
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Causes of Carryover |
実施している臨床試験では2種類の抗体作製と血清検体の集積を順調に進めることを達成できた。2022年度には臨床試験の血清検体を用いた測定実験およびマウス実験を実施する予定であり、これらの実験の研究費用を計上する予定である。
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Research Products
(4 results)