2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K07945
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 美智子 大阪大学, 医学系研究科, 講師(医学部) (50647625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 健一郎 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神疾患病態研究部, 室長 (20362535)
松本 純弥 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神疾患病態研究部, 室長 (10635535)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統合失調症 / クロザピン / 眼球運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症では、幻覚妄想などの陽性症状や意欲低下などの陰性症状に加え、認知機能障害が生じることが社会機能の低下に大きく影響している。病因は未だ明らかになっておらず、バイオマーカーも確立されていない。統合失調症の治療薬は抗精神病薬であるが、20-30%程度の患者は十分な効果が得られず、治療抵抗性と診断される。抗精神病薬の一つであるクロザピンは治療抵抗性統合失調症に対する唯一の治療薬であり、60-70%の有効率が示されている。一方で30-40%の治療抵抗性統合失調症患者はクロザピンによっても十分な精神症状の改善が得られない。このようなクロザピン抵抗性統合失調症の患者特性や病態についてはほとんど研究されておらず、そのバイオマーカーも確立されていない。本研究では、眼球運動などの中間表現型を用いてクロザピン抵抗性統合失調症患者のバイオマーカーを確立することを目的とし、今年度は被験者リクルートを中心に研究を進めてきた。その結果、クロザピン治療を行った患者のデータを継続的に取得できたが、クロザピン抵抗性の基準を満たす被験者データの増加には至らなかった。Mouaffak(Mouaffak et al. Clin Neuropharmacol. 2006)の定義では、クロザピンを8週以上投与しても精神症状評価尺度Brief psychiatric Rating Scale (BPRS)で20%未満の改善しか認めない場合、クロザピン抵抗性と診断される。ただし、8週以降もクロザピン治療を継続した場合、更に精神症状の改善を認めることがあり、今後はMouaffakの定義に加え、精神症状の経時的変化と中間表現型の関連についても検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に被験者のリクルートシステムが整っており、現在、入院および外来患者をリクルートし、DSM-5による診断を行ったうえで、採血および各種の生理機能検査、画像検査を行っている。研究に取り掛かるためのサンプル収集は済んでおり、さらにサンプルを増やすための体制が確立されている。また眼球運動異常と他の中間表現型との関連を調べるため、被験者に対してWAIS、社会活動評価などの心理検査、脳波検査、脳MRI検査を行っている。なお、より病態を反映する良質なデータを得るため、眼球運動検査の手法、課題やデータの質の吟味についても改善を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き患者リクルートを行い、神経心理、脳形態、神経生理といった中間表現型の関連やリスク遺伝子の発現量の程度について、着実にサンプル数を増加して解析を進める。クロザピン抵抗性群のリクルートも積極的に行いデータ解析を進めていく。また眼球運動検査をはじめ中間表現型を形成する検査方法について、より疾患を反映するデータが得られるよう手法や課題内容、データの質の吟味について改善を行っていく。現在、包括的遺伝解析研究の一環として学内外の研究者を中心とした脳表現型の分子メカニズム研究会に定期的に参加し、ヒトの脳表現型と遺伝子の関連を検討しているが、引き続き討論を進めていく。学会および打ち合わせ等は前年度と同様である。 大阪大学では、包括的な臨床・研究システムとして、統合失調症プロジェクト(SP : schizophrenia project)を行っている。SPは、統合失調症専門外来と統合失調症入院プログラムからなる臨床部門と、そこで得られたリサーチソース・データベースを用いた臨床研究部門・基礎研究部門からなる。本研究で用いるサンプルはこのプロジェクトからリクルートしたものであり、既に入院および外来患者をリクルートし、DSM-5による診断を行ったうえで、採血および各種の神経生理機能検査を行っている。このように研究に取り掛かるためのサンプル収集は済んでおり、さらにサンプルを増やすための体制が確立されていることにより、本研究を効果的、効率的に推し進めることができる。上記の実験と共に、サンプル収集もこれまで同様に継続して行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大の影響を受け、出席を予定していた学会はオンライン開催となり参加に係る予定であった旅費の支出がなくなったことに加え、コロナ禍の出勤制限などの影響でデータ入力や資料整理をするためのアルバイト人員の確保も難しく予定していた人件費の支出が減った。しかしながら、研究代表者および分担者にてデータ入力等を行いデータ解析を行ったため研究は予定どおり順調に進んでいる。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Effects of age and sex on eye movement characteristics2021
Author(s)
Takahashi Junichi、Miura Kenichiro、Morita Kentaro、Fujimoto Michiko、Miyata Seiko、Okazaki Kosuke、Matsumoto Junya、Hasegawa Naomi、Hirano Yoji、Yamamori Hidenaga、Yasuda Yuka、Makinodan Manabu、Kasai Kiyoto、Ozaki Norio、Onitsuka Toshiaki、Hashimoto Ryota
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Journal Title
Neuropsychopharmacology Reports
Volume: 41
Pages: 152~158
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Clozapineによる薬疹を疑われ中止した後に再投与した治療抵抗性統合失調症の1例2020
Author(s)
垰夲 大喜, 藤本 美智子, 近江 翼, 片上 茂樹, 岩瀬 真生, 橋本 亮太, 山森 英長, 安田 由華, 阿古目 純, 中川 幸延, 池田 学
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Journal Title
精神神経学雑誌
Volume: 122
Pages: 424-430
Peer Reviewed
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