2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of film-type depth-dose measurement system for carbon-ion beams and its application to multi-institutional clinical dose intercomparison
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20K08013
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
兼松 伸幸 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 物理工学部, 次長(定常) (10221889)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 粒子線治療 / 炭素イオン線 / 深部線量分布 / 患者線量検証 / ラジオクロミックフィルム / 逆畳み込み / 生物効果比 / 生物線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2020年度)は新型コロナ禍により研究実施を計画通りに進めるのは困難であったが、もともと本年度の最重要課題として計画してい たフィルム型炭素線生物線量測定装置の設計製作はほぼ完了した。まず二次元線量測定素子となるフィルムには米国アシュランド社製ガフクロミックEBT3を採用することに決定した。これは放射線治療現場で最も一般的に用いられるラジオクロミックフィルムで、放射線によるフィルムの黒化をフィルムスキャナーで読み取ることによって線量応答の二次元分布を測定するものである。ここでは基準とする放射線(高エネルギーX線)の線量とフィルム黒化度との関係を校正しておくことにより、フィルムスキャナーで読み取った黒化度を基準放射線線量に換算した量を線量応答と定義する。放射線治療照射による水中線量を測定する線量分布測定装置を構成するファントムは、ビーム粒子との相互作用において水との類似度の高い材料を用いる必要がある。本装置に対しては阻止能あたりの核反応率において水に非常に近いアモルファスPETを採用してこれを実現し、板材を束ねる構造とすることでフィルム挿入位置や枚数を自由に設定することを可能にした。線量分布測定装置の外形を作り内部にPET板を束ねて固定するフレームは機械加工を専門とする業社に依頼して製作した。 本年度は重粒子加速器HIMACの炭素イオンビームを用いて、まずPET板材やEBT3フィルムに対する炭素イオン線の基本特性を個別に測定して理論通りに検出器及びファントム材料として働くことを確認し、積層方式の治療照射を模擬した拡大SOBPビームとその構成要素である単層ビームをそれぞれに対するフィルムの黒化度を測定して、データ解析と線量測定ソフトウェアの開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試作機製作は計画通り進んだが、フィルム黒化度データを読み込んで線量に変換するソフトウェアの開発が遅れている。この理由は、新型コロナ禍による研究活動の困難もあるが、それ以上にコロナ禍に起因する様々な業務に忙殺されて十分な研究活動ができなかったことにある。40名程の部の次長としての管理業務のほか多くの方に関わる所属学会の学術活動を優先させざるを得なかった。特に、本研究代表者は2021年4月に開催された第121回日本医学物理学会学術大会の大会長を勤めたが、新型コロナ禍によりハイブリッド形式で開催されることで関係者との会義や会員対応が大きく加わったため年間を通して想像以上に激務であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度前半はデータ解析とソフトウェア開発を進め、原理実証として研究論文を投稿することを目標とする。年度後半は方法の確立した測 定装置の運用に必要な基礎データ収集を集中的に行い、当初計画からの遅れを取り戻すことを目指す。 2022年度は当初計画通り、完成した測定装置を自施設のみならず、炭素線治療の多施設共同臨床研究に参加している他施設に持ち出して線量 相互比較を実施するものとする。多施設共同臨床研究の参加施設はQSTを含めて7施設あり、既に物理線量でも相互比較実験において全施設の 線量測定の整合性が確認されている。ここでは本研究による生物効果比の補正を組み込んだ線量測定装置を用いて、世界初となる生物線量の 相互比較を行うことになる。当初計画より他施設訪問による実験を充実させて全施設の線量相互比較を行い、年度末までに結果をまとめて研 究論文として投稿する。この出版により臨床研究の信頼度を高めることが期待される。
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Causes of Carryover |
研究実績にて報告した通り、当該年度はコロナ禍による想定外の他業務で研究活動の時間が取れず、当該年度に計画していた物品購入や実験用の消耗品の購入をそれらが必要となる時まで待つことにしたため。次年度以降はに当該年度の未執行分も含めて予算執行を計画している。
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