2021 Fiscal Year Research-status Report
BNCTを目的としたホウ素アミノ酸製剤の体内動態制御法の開発
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20K08115
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Research Institution | Ibaraki Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
島本 直人 (鹿野直人) 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (80295435)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / 4-Borono-phenylalanine / アミノ酸エステル |
Outline of Annual Research Achievements |
4-Borono-L/D-phenylalanine (BPA)の光学異性体間の細胞取り込みについて基礎的に検討した。アミノ酸エステルを交換輸送刺激剤として用い、L-[14C]-BPAと、特に担癌マウスによるインビボでの検討で腫瘍/正常組織集積比の高いD-[14C]-BPAの集積増大に関する検討をCHO-K1(Chainese hamster ovary-K1)細胞で行った。CHO-K1細胞10万個を6 cmφディッシュ(5×105 cells / dish) に播種し、培養液Dulbecco’s Modified Eagle Mediumを用いて37 ℃、CO2 5%、pH 7.4の条件下で5日間培養した。CHO-K1に3.7kBq のL-[14C]-BPAのみをディッシュに投与し120分間取り込ませた場合、投与量に対する細胞内への取り込みの最大値が26.3%であるのに対し、L-[14C]-BPAとL-TyrOEtを同時に投与すると最大で51.6% と約2倍も取り込まれた。また、L-TyrOEt濃度への依存性について検討したところL-[14C]-BPAはL-TyrOEt 濃度1mM付近をピークとする集積増大が確認された。D-[14C]-BPAについて同様の検討をしたところ、細胞内への取り込みの最大値が120分間のインキュベートで約13%であるのに対し、L-[14C]-BPAとL-TyrOEtを同時に投与すると細胞内に最大で約16% に留まった。D-[14C]-BPAでは、インキュベート時間の延長で更に取込み量が増大する可能性が示唆された。また、交換輸送刺激剤の濃度依存性の検討ではL-TyrOEt濃度100μMをピークとする取り込み量の変化が見られた。相対的に生体に親和性の低い光学異性体D-BPAの細胞集積性を高めることが今後の課題といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで研究計画は、「新規ドラッグデザインの検討」「新規体内動態制御法の検討」「イメージングによる局在定量法の改良」の3項目に分けて行ってきた。「新規ドラッグデザインの検討」については、D/L-プシコースやD/L -フルクトース他とBPAとの新規結合体について引き続き検討している。今年度までの検討結果として、臨床利用されているD -フルクトースとBPAの結合体の他にも有用なものが見出されつつある。今後、それらの細胞レベル、個体レベルでの検討に移行する。「新規体内動態制御法の検討」では、本年度の主な研究実績に示した様に、細胞レベルでは交換輸送刺激剤L-TyrOEtが、特にL-[14C]-BPAの取込み増大効果が見られたが、D-[14C]-BPAについてインキュベート時間を含め取込み条件の更なる検討が必要である。D-[14C]-BPAは、特に担癌マウスによるインビボでの検討で腫瘍/正常組織集積比の高いことが確認されているため今後の検討が期待される。トレーサー濃度のBPAでは、十分な効果が得られている。次の段階である腫瘍親和性リポソームの作成には至っていない。「イメージングによる局在定量法の改良」については実施に至っていない。以上の様に概ね計画に沿って進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのように「新規ドラッグデザインの検討」「新規体内動態制御法の検討」「イメージングによる局在定量法の改良」の3項目に分けて今後も推進するが、このうち、「新規ドラッグデザインの検討」では、期間内に残りの複数の化合物について取込み量の評価を繰り返し、脳腫瘍、膵臓癌、大腸癌等の培養細胞で優秀な結果を得た化合物については、ヌードマウスに種々の腫瘍を移植したインビボ実験系での検討に順次進む。「新規体内動態制御法の検討」では、ポリビニルを利用した方法とD/L-プシコースなどのBPA結合体との比較、腫瘍親和性リポソームについては、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究が可能であるか再度検討する。「イメージングによる局在定量法の改良」については、一般病院に広く普及しているSPECT/CTでの定量イメージグが可能な単光子放出核種によるBPA代替的化合物による体内分布計測を可能とする分子イメージング剤を開発する。また、筑波大学の画像検査センターとの共同で18F-D-BPAを用いた動態制御法の検討を担癌マウスによるインビボ実験系で行えないか協議を始めている。
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Causes of Carryover |
「新規体内動態制御法の検討」で、4-borono-L-phenylalanine (BPA)とエステル結合を形成すると考えられる構造を持つ糖類とその光学異性体について検討した。これらの結合体が腫瘍細胞に期待した通り取り込まれるかについての評価に用いる実験系として、当初は、発現クローニング法により得たcDNAから、アミノ酸輸送体の機能発現をさせた評価系を利用する予定であったが、費用対効果を考えて培養細胞で行う事とした。また、腫瘍親和性リポソームの作成段階には現在至っていない。これらの消耗品について購入する必要がなくなった。これらの予算は、次年度の細胞での実験系に用いる消耗品に充てることとする。
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