2020 Fiscal Year Research-status Report
放射線被ばくによるがん化リスクを抑制する分子機構の解析
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20K08117
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
齋藤 陽平 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (10613698)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線 / DNA損傷 / APOBEC3 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線被ばくによるがん化リスクは、DNA損傷に基づく突然変異による。この突然変異は、物理化学的な直接的なDNA損傷だけではなく、DNA損傷修復機構の活性化や抑制、また二次的なDNA損傷によっても影響されうる。APOBEC3Bは、放射線照射により発現誘導されるだけではなく、照射によるDNA損傷修復過程の初期にも影響することが明らかになっている。本研究では、照射後の突然変異形成過程におけるAPOBEC3Bの影響を精査し、放射線被ばくによるがん化リスクを抑制する分子機構を明らかにするため、APOBEC3B発現細胞や機能欠損・部分欠損APOBEC3B発現細胞を用いてDNA損傷修復およびDNA複製段階における相互作用分子の同定・機能解析を行うことを目的としている。
培養細胞への放射線照射はAPOBEC3Bの持続的な発現を誘導し、APOBEC3Bは放射線照射後の部分欠失の増加に寄与していた。作用機序を調べるために薬剤誘導発現Tet on systemを用いたAPOBEC3Bの発現細胞を使用し、APOBEC3Bと相互作用するタンパク質を共沈させ、現在、その解析を行っている。細胞分画による解析では、APOBEC3Bはいくつかのリボ核タンパク質などとともにクロマチン画分ではなく、核マトリクスを含む界面活性剤不溶画分に存在し、高塩濃度でも不溶であることがわかった。同時に薬剤や放射線照射後のAPOBEC3Bの局在変化について画像解析も行っている。一方、APOBEC3Bは、薬剤誘導による一過性の発現でも核の異常分裂を引き起こすため、作用機序解明やAPOBEC3B発現細胞の改良、さらにAPOBEC3B相互作用分子による突然変異の評価法の構築を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により一部の実験が予定通りにできず、研究計画の一部に遅れが生じた。また、薬剤誘導発現Tet on systemを用いたAPOBEC3Bの発現細胞のさらなる改良のため、APOBEC3BのN末タグを導入しようと試みたが、3XFLAGタグなどの短いタグでもN末付近の核局在化配列に影響を及ぼし、APOBEC3Bの発現量低下や局在が変化してしまうため、C末タグの改良に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
おおよそ計画通りに進行しているため、今後も相互作用タンパク質の解析を行っていく。特に相互作用タンパク質のうち、機能に影響を与えるものについてを中心に解析を行う予定でいる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により一部の実験の進行に影響があったためであるが、本年度明らかになった知見を踏まえ、相互作用タンパク質の解析を選択することにより効率化を目指す。
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