2022 Fiscal Year Research-status Report
放射線被ばくによるがん化リスクを抑制する分子機構の解析
Project/Area Number |
20K08117
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
齋藤 陽平 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (10613698)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線 / APOBEC3 / DNA損傷 / 核小体 / 核マトリクス |
Outline of Annual Research Achievements |
がん化リスクを抑制する分子機構を明らかにするためにAPOBEC3B(A3B)発現もしくは欠損細胞を用いてDNA損傷修復及び複製段階における相互作用分子の同定及び機能解析を行うことを目的としている。共焦点顕微鏡による観察では、A3Bは核小体には存在せず核内に不均一に拡散しており、核膜の裏側には少ないことが明らかになっている。細胞分画により局在を確認するとその多くが核マトリクス分画に存在した。DNA障害時も核マトリクス分画に存在し、クロマチン分画に移行することはなかった。A3Bと相互作用するタンパク質解析のため、A3B-FLAGタグ発現細胞の作成を試みたが、ウェスタンブロットによるA3B-FLAGタグタンパク質の発現は見られたものの免疫沈降ができなかった。改善策としてリンカーの挿入やタンデムタグ化を行った。 免疫沈降はできたが、もう一つのタグによる精製ができなかった。そこでA3B-AcGFPをターゲットに変更し、VHH抗体を用いて免疫沈降を行なった。共沈タンパク質をLC-MS、D I A分析を行いPrecursor FDR と Protein FDR がともに 1% 以下となるタンパク質の同定ならびに定量値の算出を行なった。定量値の大きいタンパク質の多くが核マトリクスタンパク質として知られるタンパク質であった。さらにDNA複製、転写、DNA修復に関与するタンパク質群も多く検出された。また核小体に存在するリボソームタンパク質がほとんど検出されなかった。これは、A3Bが核小体に存在しないことに一致した結果だと考えられる。現在、同定されたタンパク質とA3Bの結合の解析を行なっている。またA3Bは、核小体ストレスにより局在が変化することを確認していたが、抗がん剤の種類により核小体内部や核小体外縁部もしくは周辺部など集積パターンが異なることが明らかになり、現在も解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
APOBEC3Bが不溶性でまだ機能的な解析が不十分な核マトリクスに結合するタンパク質であり、またAPOBEC3Bの変異導入が行われると考えられるDNA複製、転写、修復に関するタンパク質がDIA解析の結果、数多く同定されたため、解析に時間を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も相互作用タンパク質の解析を行っていく。特に相互作用タンパク質のうち、機能に影響を与えるものを中心に解析を行う予定でいる。
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Causes of Carryover |
DIA解析に使用するタグ付きA3B発現細胞の作成と評価に時間がかかったため、予定していた一部のDIA解析を次年度に繰り越したため。現在、問題は解消されたため、計画通りの実験を行う。本年度明らかになった知見を踏まえ、相互作用タンパク質の解析を選択することにより効率化を目指す。
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