2020 Fiscal Year Research-status Report
DNA修復と細胞周期制御のカップリング機構の解明による放射線治療の最適化
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20K08127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細谷 紀子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (00396748)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DNA修復 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療や細胞障害性の抗がん剤治療は、細胞のDNAに外的に二本鎖切断を与え、正常細胞には影響を与えずに、がん細胞だけに細胞死を引き起こすことを目標とする治療である。生成されたDNA二本鎖切断が修復されずに残存すれば細胞は死滅するが、二本鎖切断が修復されると細胞は生き残ってしまう。したがって、有効ながん治療を行うためには、正常細胞には存在せず、がん細胞のみに存在するDNA修復の制御異常の特性を捉えて治療戦略に生かすことが重要である。DNA修復は、細胞周期制御などの他の細胞機能と連携して機能し、また、多様な因子によって制御を受けていることが想定される。本研究では、DNA二本鎖切断修復を担う主要な経路の1つである相同組換え修復に関与する分子群が細胞周期制御をはじめとする他の細胞機能とどのように連携しているのかに焦点をあてて機能解析を行うことを通じて、放射線治療を含むがん治療の最適化のための治療戦略を提唱するための基本原理を確立することを目指す。まず、相同組換え修復において中心的な役割を果たすRAD51をはじめとする相同組換え関連分子の発現を正常の網膜上皮細胞において抑制したときに、細胞周期の進行に与える影響を解析した。その結果、いくつかの分子の発現抑制によってG0/G1期における細胞周期の進行が遅延する現象が見られることが分かった。相同組換えでは、DNA複製によって生成される姉妹染色分体を修復の鋳型として用いることが必要であることから、S期後半からG2期に限定して働くと考えられているが、今回の結果から、相同組換え関連分子の中にG0/G1期における細胞周期制御に何らかの役割を果たしているものがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
緊急事態宣言下で、細胞を用いた継続的な実験を一時停止する必要が生じた期間があった。また、一部の分子について、適切なsiRNAの選定に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
G0/G1期における細胞周期制御に影響を及ぼすことが観察された相同組換え関連分子について、その発現抑制がCyclin D1-CDK4/6の複合体形成や発現レベルに及ぼす影響やG0/G1期における細胞内局在を調べることにより、どのようなメカニズムでG0/G1期の細胞周期を制御に関わるのかを解明していく。
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Causes of Carryover |
(理由)COVID-19の世界的流行に伴い、参加を予定した国内外の学会が中止、もしくは、オンライン開催に変更になったため、予定していた旅費の支出が不要となった。 (使用計画)次年度の物品費と合わせ、まだ十分に進行していない相同組換え関連分子の細胞周期制御における役割解明のための機能解析に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)