2021 Fiscal Year Research-status Report
有機銅錯体-循環型キレート剤混合ミセルを用いたMenkes病治療薬の展開
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20K08250
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宗形 光敏 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30312573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 恭弘 帝京大学, 医学部, 助教 (00750241)
児玉 浩子 帝京平成大学, 未登録, 特任教授 (00093386) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Menkes病 / Macular mouse / Disulfiram |
Outline of Annual Research Achievements |
Menkes病は銅トランスポーターATP7Aの遺伝子異常による希少疾患である。必須元素である銅の吸収や脳への送達ができず、臓器の致死的な機能不全を来す。初年度、銅錯体前駆物質Disulfiramを溶液とする人体に無害な溶媒を見出しDisulfiram溶液とし、Menkes病マウスモデル(マクラマウス)に投与したところ、これまでの原末の投与に比べ著しく生存率と成育が向上した。 今年度はまず体内臓器の銅分布がDisulfiram溶液の経口投与によりどのように変化するかを検討した。マクラマウス及びその同胞対照に対し、生後7、10、13日齢にDisulfiram溶液を投与、14日齢で臓器中銅濃度を計測した。実験中の栄養は母マウスからの母乳のみとし、銅製剤の投与は行わないこととした。組織サンプルは濃硝酸で分解した後、誘導結合プラズマ質量分析により銅を測定した。その結果、マクラマウスの脳組織中銅濃度はDisulfiram投与群で大き上昇してることがわかった。 生存と成育が良好となることから、Disulfiram溶液によって脳へ送達された銅は生存に足る量であり、その銅は体内の銅代謝に組み込まれ機能したと考えられる。一方、銅依存性酵素DBH活性はマクラマウス対照に比べて上昇がみられなかった。 以上からこれまで難溶であったDisulfiramを溶液とすることで薬効と効果の安定性が向上することが示された。Disulfiramは利用可能な銅を脳に送達する一方同依存性酵素の一部とは銅の平衡関係にあり複雑な動態が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Disulfiram溶液の投与によるマクラマウスの体内分布の検討を終え、銅の付加的な投与がなくとも脳内の銅濃度が上昇していることが確認された。一方で銅依存性酵素活性の一部に十分な上昇が見られず、Disulfiramによって形成される銅錯体と銅依存性酵素間の銅の受け渡しについてさらに検討する必要が生じた。また、次のステップとしてDisulfiram溶液のミセル化に進む予定であるが、現在至適な条件を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度より引き続きマクラマウスとその野生型対照を用いて上述の溶液化したDisulfiramのMenkes病病態に対する効果を引き続き検討する。検討項目は計画に従って、主要臓器の銅濃度、セルロプラスミン活性、カテコラミン濃度比等を計測し、各臓器への銅送達、銅依存性酵素活性の回復を評価する。また、Disulfiram溶液のミセル化、カプセル化の至適な条件を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延があり、動物の繁殖、薬剤の投与計画に遅れが生じ、試薬などの購入と使用が計画通りに進まなかったため、次年度使用額が生じた。この分は次年度で購入し、研究を遂行する。
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