2021 Fiscal Year Research-status Report
低分子量ストレスタンパク質群の分子標的タンパク質同定と機能制御システムの解析
Project/Area Number |
20K08283
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
西脇 理英 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90734202)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 光治 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 特任教授 (70402196)
小澤 修 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90225417)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ストレス蛋白質 / 低分子量 / 肝細胞癌 / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱や化学物質などの種々のストレスに対して、生体が迅速に反応することで一連のストレスタンパク質(HSP)は誘導される。その中で、分子量が10-30 kDaの一群の低分子量ストレスタンパク質はHSPBと総称され、ヒト肝蔵にも恒常的に発現している。HSPBは肝癌組織においてもその発現は高い。肝細胞癌は高率な再発・転移の為に予後不良であり新たな治療法が模索されている。私共は肝細胞癌の発症・進展の機序においてHSPBに着目し、リン酸化型HSP27及びHSP20がMAP kinase pathwayやAKT pathwayを抑制して肝癌細胞増殖に対して抑制的に作用すること、HSP20およびHSP22の分子標的がPI3 kinaseであり、その直接相互作用が肝癌細胞の転移能に対して抑制的に作用することを明らかとした。本研究ではHSPBが肝細胞癌においてどのような相互作用を行い、どのように機能しているのかを検討するために、HSP20を強制発現させたヒト由来肝細胞癌細胞株HuH7を用いてHSPBの直接的相互作用について検討した。その結果、HSP20およびHSP22は、各々がHSP27と直接に結合するが、HSP20とHSP22との間には直接結合がみられず、独立して作用している可能性があることを明らかとした。さらに、ヒト肝細胞癌手術標本の腫瘍部でもHSPBの相互作用を検討したところ、HSP27とHSP20およびHSP27とHSP22との直接結合が認められた。HSP27とHSP20およびHSP27とHSP22の直接結合は、両方が存在する、どちらか片方のみ、どちらも認められない症例がそれぞれ存在することを見出した。一方、HSP20とHSP22との直接結合は全例において認められず、肝細胞癌においてHSP20とHSP22は直接には相互作用がないことが強く示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSP20およびHSP22は、各々が肝癌細胞の遊走を抑制していることを明らかとしている。またHSP27が肝癌細胞の増殖に関わっていることも報告している。肝癌細胞内におけるHSP27、HSP20およびHSP22の相互作用については不明であった。今回、肝癌細胞に加えてヒト肝細胞癌の腫瘍部でHSP20およびHSP22がそれぞれHSP27と直接相互作用していることを明らかとした。さらにHSP20とHSP22との相互作用についても検討したところ、検討した症例全てにおいてHSP20とHSP22とは直接の相互作用が認められなかった。したがってHSP22とHSP20は、それぞれが独立してHSP27と直接結合をすることで、肝癌細胞の進展を制御している可能性を示唆することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
HSP20およびHSP22とHSP27との相互作用にリン酸化などの修飾の影響はあるのか、さらにこれらの相互作用は肝癌細胞の機能に影響を及ぼしているのかを肝癌細胞株に加え、ヒト肝癌組織標本おいても検討進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により研究中断を余儀なくされたため
|
Research Products
(2 results)