2021 Fiscal Year Research-status Report
モノアミンシグナルを介した膵島の機能性調節機構の解明
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20K08325
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂野 大介 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (40571039)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵臓 / ドパミン / ヘテロ性 / β細胞 / インスリン / ROS / 脱分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病や2型糖尿病の治療に対し膵島や膵臓移植が有効な治療法である。しかし、ドナー不足がこれらの治療法を広く利用することの妨げになっているため、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)からの膵β細胞分化誘導法が近年の研究により確立されつつある。 一方でヒトiPS細胞由来β様細胞への分化誘導細胞が試験管内で成熟度を長期間保持することは困難であり、誘導されたインスリンを分泌できる細胞群を用いて糖尿病モデルマウスへの移植実験を行うと移植後に移植された細胞の細胞死や脱分化によりインスリン分泌を維持でない現状がある。 我々が着目するドパミンを介するβ細胞間のシグナル伝達は移植後の細胞機能が維持できない問題点を改善する一因であると考えている。膵島内でのドパミン合成に関与する酵素であるTyrosine Hydroxylase(TH)陽性細胞は全膵島細胞中の5%以下しか存在しない。これまでの研究の中で膵臓β細胞内外のドパミン濃度はインスリン分泌の抑制や細胞の成熟度、細胞死の誘導を制御するうえで重要な因子である。TH陽性細胞と陰性細胞間のドパミンの受け渡しによる細胞集団としての膵島の細胞間相互作用を理解することはiPS細胞を用いた臓器再生に向け重要であると考えている。今年度は、前年度までに得たTH陽性細胞に隣接するTH陰性のβ細胞の機能低下について分子生物学的手法を用いて研究を進めるとともに一部にTH陽性細胞を含む膵島細胞集団としての機能評価も併せて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年に作製したTH遺伝子を強制発現する遺伝子カセットを組み込んだアデノウイルスを用い、一部のβ細胞のみがTHを強制発現する疑似膵島をマウス初代培養膵島細胞から作成した。その結果、TH陽性細胞の割合が増すにつれて膵島全体としての脱分化が早期に進行した。しかしながらTH強制発現細胞を含まない疑似膵島では約1週間後にはインスリン産生能が50%以下に低下し、その他の成熟化マーカー遺伝子の発現も顕著に低下した。一方で、TH強制発現細胞を1%でも含む場合は初期には前述のような脱分化が起こるもののその低下速度が緩やかになり1週間後においても70%以上のインスリン産生能を維持していた。これらの結果は、ドパミンの受け渡しにより成熟度が少し低下した“弱い脱分化状態”を維持することでβ細胞が重篤な脱分化に至らないようにしていることを示唆するものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
ドパミンによる効果が膵島全体のβ細胞が同時に機能することを阻害し、過剰なインスリン分泌を行った後の脱分化を抑制する仕組みとなっていると推察している。新たな疑問としては、TH陽性細胞は糖尿病の進行に伴い増加することをすでにマウス生体を用いた実験結果から明らかにした。したがって、TH陽性細胞となるためのTH遺伝子発現の制御についても考える必要があると考えている。すなわちTH陽性細胞からのドパミンシグナルを消失させなければ弱く脱分化したβ細胞が機能を回復するには至らないと推察できるため、TH遺伝子の発現抑制機構についても解明できるよう研究を進めたい。
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