2020 Fiscal Year Research-status Report
Pathological analysis of Helicobacter suis and gastric microbiome in gastric MALT lymphoma
Project/Area Number |
20K08365
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
徳永 健吾 杏林大学, 医学部, 准教授 (80439182)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林原 絵美子 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (20349822)
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 教授 (90255406)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Helicobacter suis / 胃MALTリンパ腫 / 胃内microbiome / Helicobacter pylori / NHPH |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は胃MALTリンパ腫患者からHelicobacter suis(H.suis)を人工培地で分離培養することに世界で初めて成功した。ヒト胃から分離されたH.suisを用いたマウス感染実験により、感染4か月後のマウス胃粘膜に、炎症性変化および化生性変化などの病態発症を確認した。また感染マウスの胃から分離された菌は,ゲノム解析により感染させた患者由来のH.suisと同じであり、コッホの原則により、H.suisが胃粘膜障害を引き起こす病原細菌であることを確認した。 また臨床検体から分離されたH.suisの完全ゲノム配列を決定し、豚由来株のゲノムと比較したところ、ヒト由来株のゲノムは豚由来株のゲノムに類似しており、豚に感染しているH.suisがヒトにも病原性を有する人獣共通感染症の起因菌である可能性が強く示唆された。 H.suisはピロリ菌の持つ主要な病原因子であるCagAやVacAを保有しないことから、ピロリ菌とは異なる機序でその病態を発症すると考えられているが、本研究ではヒト由来H.suisのゲノム上には菌株特異的なplasticity zoneが存在していることを明らかにしており、今後、これらの領域を含む病原因子の感染における役割の解明が期待される。 H.suisなどのピロリ菌以外のヘリコバクター属菌は、ピロリ菌検出法では検出できないため、主に胃生検体から調製したDNAを材料としたPCR法で感染診断が行われてきたが、今回H.suisが培養できるようになったことにより、菌に特異的なタンパク質を標的とした感染診断法の開発が促進されることが期待される。さらに、本研究ではH.suisの薬剤感受性測定法を確立しており、今後H.suisの薬剤感受性情報が蓄積されることにより、最適な治療法の確立に有用な情報が得られると考えらる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胃MALTリンパ腫を含む複数の胃疾患患者からのH.suisを人工培地で分離培養することに世界で初めて成功した。また得られたヒト胃由来H.suisを用いたマウス感染実験により胃での病態発症を確認し、病態組織から菌の再分離にも成功したことから、H.suisがヒト胃における病原細菌であることも証明した。 H. pylori陰性胃 MALTリンパ腫の胃内微生物構成、機能の評価および除菌前後の胃内微生物構成および機能の評価を行うために検体採取までは進んでいる。 なお学会発表は、コロナ感染症の蔓延により遅延しており、特に予定していたアメリカ消化器病学会での発表は実行に至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
胃MALTリンパ腫の病態にH. suisが関与することを明らかにした。さらに症例数を増やし、H.suisの病態発症機構の解明、診断法の開発、最適な治療法の確立を目指すために薬剤感受性試験の結果が蓄積していく。 H. pylori陰性胃 MALTリンパ腫の胃内微生物構成、機能の評価および除菌前後の胃内微生物構成および機能の評価を行うための症例数を今年度いっぱい増やしていく。今年度後半にはメタゲノム解析を進め、胃内微生物叢コミュニティ全体の構成および機能を評価していく。 そして予定していたアメリカでの発表を行い、3年目には論文化を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染蔓延により、メタゲノム解析の測定に遅延が生じた。
|
Remarks |
★杏林大学医学部、国立感染症研究所、北里研究所、AMEDにて、本研究グループの研究内容(PNAS 論文)が共同プレスリリース。
|