2020 Fiscal Year Research-status Report
多機能プロテアーゼによる血小板産生機構と急性冠症候群における意義
Project/Area Number |
20K08445
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
大野 美紀子 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (10583198)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 英一郎 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30362528)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 急性冠症候群 / 血小板 / 動脈硬化 / 多機能プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
血小板は、止血凝固以外に、急性冠症候群(ACS)の発症起点である動脈硬化性プラークの破 裂に引き続く血栓の形成に寄与し、血小板数の増加はその予後不良因子の一つとしても知ら れている。血小板は、骨髄において成熟巨核球の細胞質がちぎれる「血小板シェディング」 により産生されるが、その詳細な分子機構やACSとの関連は十分解明されていない。 我々の研究対象であるナルディライジン(NRDC)は、様々な生物学的作用を有する多機能プロテアーゼであり、ACSの超早期診断マーカーである。最近、培養装置で発生させた乱流刺激が血小板シェディングを誘導すること、NRDCが成熟巨核球より乱流刺激によって分泌され、血小板シェディングを正に調節することが明らかとなったが、詳細な機序は明らかではない。NRDCはヒトiPS細胞由来巨核球 (imMKCL)に高度に発現しており、乱流刺激により核から細胞膜へと移行し、乱流強度依存性に培養上清中に分泌されることがわかった。また、imMKCLの培地中にNRDCタンパク質を加えると血小板産生が増加したことから、乱流刺激による血小板産生増加の一部はNRDC分泌に依存することが示唆された。酵素活性欠失型変異NRDC(NRDC E>A)を加えても血小板産生は増加しなかったことから、NRDCが細胞外で酵素活性依存性に血小板シェディングに寄与していることが示唆された。そこで本研究では、NRDCによる生体における血小板産生機構、その酵素活性による血小板シェディング調節機構、巨核球からの分泌NRDCの役割、ACSにおける血小板と分泌NRDCの役割を明らかにすることを目的とした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①生体での血小板産生におけるNRDCの役割、②血小板産生におけるNRDCの 酵素活性の役割、③imMKCLにおけるNRDCの分泌機構、④ACSにおける血小板と分泌NRDCの役 割の解明を目的とし、実験を進めている。 初年度は、①生体での血小板産生におけるNRDCの役割を明らかにするため、巨核球特異的Nrdc欠損マウス (Pf4-Nrdc-KO) の作製と解析を行った。また、②NRDCの酵素活性の意義を明らかにするため、酵素活性欠失型Nrdcノックインマウス(Nrdc E>A KI)を作成し解析を行った。①の解析は概ね順調で解析を進めることができた。しかし②に関しては、生後早期にNrdc E>A KI/KI(ホモノックイン)マウスが死亡することが明らかとなり、解析の方針を変更した。そこでこのマウスの解析については当初の予定よりさらに準備期間が延びたため、やや解析が遅れた。
|
Strategy for Future Research Activity |
①について、引き続き解析を行う。何も刺激を与えていない定常状態においては、Pf4-Nrdc-KOの血小板数は野生型と比較して変化を認めなかった。さらに、敗血症のような炎症性サイトカインの産生を誘導するようなLPS投与や、抗血小板抗体を用いた血小板減少を促す刺激を行い、Pf4-Nrdc-KOの血小板数を解析したが、野生型と比較して変化を認めなかった。以上より、生体内における血小板の産生には、NRDCの機能を代償する分子が存在すると考えられる。そこで、巨核球の成熟過程や血小板生成に関わる遺伝子発現に野生型マウスと差が認められるかどうかを明らかにするため、Pf4-Nrdc-KOから単離した骨髄由来の巨核球よりRNAを抽出しRNA-seqを行う。 ②についてはこれまでのC57Bl6Jバックグラウンドでは成体におけるNRDCの機能を解析することができなかったため、ICRバックグラウンドに遺伝子背景を変える方針とし、6世代戻し交配を行い解析を行うこととした。その中でNrdc E>A KIについてもPf4-Nrdc-KOと同様に、血小板数の解析を行い、生体内での血小板産生にNRDCの酵素活性が必要なのか否かを確認する。 さらに、③imMKCLにおけるNRDCの分泌機構については、巨核球から培養上清中にNRDCが分泌されると報告されている、もしくは他の細胞においてNRDCの分泌が促進されることが明らかとなっている候補分子による刺激を行い、分泌されたNRDCの定量評価を行う。 ④ACSにおける血小板と分泌NRDCの役割について、ACS症例における血清NRDC値の多施設前向きコホート研究の結果を元に、血小板数とACS発症に正の相関が認められるかどうかを検討する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で学会出張がなくなったため、旅費を執行することがなかった。次年度に繰り越し旅費に充てる予定である。
|
-
[Journal Article] Serum anti-LRPAP1 is a common biomarker for digestive organ cancers and atherosclerotic diseases.2020
Author(s)
Sumazaki M, Machida T, Kamitsukasa I, Mori M, Sugimoto K, Uzawa A, Kuwabara S, Kobayashi Y, Ohno M, Nishi E, Maezawa Y, Takemoto M, Yokote K, Takizawa H, Kashiwado K, Shin H, Kishimoto T, Matsushita K, Kobayashi S, Nakamura R, Shinmen N, Kuroda H, Zhang XM, Wang H, Goto KI, Hiwasa T.
-
Journal Title
Cancer Science
Volume: 111
Pages: 4453-4464
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Association between serum anti ASXL2 antibody levels and acute ischemic stroke, acute myocardial infarction, diabetes mellitus, chronic kidney disease and digestive organ cancer, and their possible association with atherosclerosis and hypertension.2020
Author(s)
Li SY, Yoshida Y, Kobayashi E, Adachi A, Hirono S, Matsutani T, Mine S, Machida T, Ohno M, Nishi E, Maezawa Y, Takemoto M, Yokote K, Kitamura K, Sumazaki M, Ito M, Shimada H, Takizawa H, Kashiwado K, Tomiyoshi G, Shinmen N, Nakamura R, Kuroda H, Zhang XM, Wang H, Goto K, Iwadate Y, Hiwasa T.
-
Journal Title
International Journal of Molecular Medicine
Volume: 4
Pages: 1274-1288
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-