2021 Fiscal Year Research-status Report
多機能プロテアーゼによる血小板産生機構と急性冠症候群における意義
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20K08445
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
大野 美紀子 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (10583198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 英一郎 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (30362528)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 急性冠症候群 / 血小板 / 動脈硬化 / 多機能プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
血小板は、止血凝固以外に、急性冠症候群(ACS)の発症起点である動脈硬化性プラークの破 裂に引き続く血栓の形成に寄与し、血小板数の増加はその予後不良因子の一つとしても知ら れている。血小板は、骨髄において成熟巨核球の細胞質がちぎれる「血小板シェディング」 により産生されるが、その詳細な分子機構やACSとの関連は十分解明されていない。 我々の研究対象であるナルディライジン(NRDC)は、様々な生物学的作用を有する多機能プロテアーゼであり、ACSの超早期診断マーカーである(Chen, Ohno et al.IJC2017)。培養装置で発生させた乱流刺激が血小板シェディングを誘導すること、NRDCが成熟巨核球より乱流刺激によって分泌され、血小板シェディングを正に調節することが明らかとなり2018年に報告したが(Nakamura et al. Cell, 2018)、詳細な機序は明らかではない。NRDCはヒトiPS細胞由来巨核球 (imMKCL)に高度に発現しており、乱流刺激により核から細胞膜へと移行し、乱流強度依存性に培養上清中に分泌されることがわかった。また、imMKCLの培地中にNRDCタンパク質を加えると血小板産生が増加したことから、乱流刺激による血小板産生増加の一部はNRDC分泌に依存することが示唆された。酵素活性欠失型変異NRDC(NRDC E>A)を加えても血小板産生は増加しなかったことから、NRDCが細胞外で酵素活性依存性に血小板シェディングに寄与していることが示唆された。そこで本研究では、NRDCによる生体における血小板産生機構、その酵素活性による血小板シェディング調節機構、巨核球からの分泌NRDCの役割、ACSにおける血小板と分泌NRDCの役割を明らかにすることを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①生体での血小板産生におけるNRDCの役割、②血小板産生におけるNRDCの 酵素活性の役割、③ACSにおける血小板と分泌NRDCの役割の解明を目的とし、実験を進めている。 初年度は、①生体での血小板産生におけるNRDCの役割を明らかにするため、巨核球特異的Nrdc欠損マウスの作製と解析を行った。また、②NRDCの酵素活性の意義を明らかにするため、酵素活性欠失型Nrdcノックインマウス(Nrdc E>A KI)を作成し解析を行った。次年度には①②を継続しつつ、③の解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
①定常状態において、巨核球特異的Nrdc欠損マウスの血小板数は野生型と比較して変化を認めなかった。さらに、敗血症のような炎症性サイトカインの産生を誘導するようなLPS投与や、抗血小板抗体を用いた血小板除去を行い、解析を行ったが、野生型と比較して変化を認めなかった。これらのマウスの骨髄由来巨核球を単離し、NRDCのmRNA発現レベルを解析したところ、野生型と比較して半分程度の減少にとどまった。NRDCの全身性NRDC欠損マウスのヘテロはホモノックアウトマウスと比較して一部の臓器を除き表現型は乏しい。そこで、全身性NRDCヘテロ欠損マウスと巨核球特異的Nrdc欠損マウスを交配し解析を行ったところ、NRDC mRNAレベルは野生型の1割程度までノックアウトできたが、血小板数に有意な変化を認めなかった。ただしMPVは増加していた。以上より、生体内における血小板の産生には、NRDCの機能を代償する分子が存在すると考えられた。今後これらのマウスについて巨核球由来mRNAを用いてRNA-sequenceを行う。 ②NRDC E>Aマウスの解析を行った。成体NRDC E>Aマウスは、現在のところ全身性NRDC欠損マウスに類似した表現型を呈している。 ③ACSにおける血小板と分泌NRDCの役割について、ACS症例における血清NRDC値の多施設前向きコホート研究の結果を元に、血小板数とACS発症に正の相関が認められるかどうかを検討中である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で旅費を計上する機会が無かった。
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[Presentation] Nardilysin is a Potential Biomarker for the Early Diagnosis of Non-St-Segment Elevation Acute Coronary Syndrome, A Multicenter Prospective Cohort Study, Nardi-ACS Study2021
Author(s)
Mikiko Ohno, hiroki shiomi, Mariko Yano, Takanori Aizawa, Yukiko Nakano, Shintaro Yamagami, Masashi Kato, Masanobu Ohya, Po-Min Chen, Kazuya Nagao, Kenji Ando, Kazushige Kadota, Takafumi Yokomatsu, Inada Tsukasa, masato kurokawa, Takeshi Morimoto, Takeshi Kimura and Eiichiro Nishi
Organizer
American Heart Assocication, Scientific sessions 2021
Int'l Joint Research
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