2021 Fiscal Year Research-status Report
Diagnosis and therapeutic effect of neurally mediated syncope (NMS) using fluctuation of adenylate cyclase activity
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20K08498
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小見山 智義 東海大学, 医学部, 准教授 (60439685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 公一郎 東海大学, 医学部, 教授 (30246087)
永田 栄一郎 東海大学, 医学部, 教授 (00255457)
小林 広幸 東海大学, 医学部, 教授 (60195807)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経調節性失神 / アデニル酸シクラーゼ活性量 / アドレナリン受容体遺伝子 / NMS診断 / NMS治療効果 / カフェイン / グルタミン酸 / リピート配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの我々の研究から、血圧や心拍数等に影響を与えるアデニル酸シクラーゼ活性量(AC)が神経調節性失神(NMS)の発症に関わることが分かってきた。特に、NMS患者では健常者の平均値よりも高いグループと低いグループがあることが分かり、NMS診断に用いることができる可能性を導いた。また、NMS患者からコーヒーや緑茶等のカフェインの摂取量について聞き取り調査を行ったところ、摂取量に違いが見られた。そこで、一部の患者のカフェインの摂取量を調整したところ、NMSを発症しなかったことが観察された。 例えば、AC活性量の高い60代患者に、毎日5-6杯のコーヒーを1-2杯に控えてもらったところ、10ヶ月間1回のふらつきのみで失神は起こらなかった。また、毎月1回のふらつきかNMS失神を起こしていたAC活性量の低い30代患者には、毎日ドリップコーヒーを1杯程度半年間飲んでもらった。その間1回程度のふらつきしか起こらなかった。しかし、コーヒーの摂取を止めた後には数回のふらつきがあり、ふたたびNMSを発症し倒れてしまったなどのいくつか症例を確認することができた。 次に、NMS発症に関してアドレナリン受容体遺伝子(ADR-α2B)変異の頻度との関連性を調査した。特に、アミノ酸配列内に見られるグルタミン酸Glu (E:p.Glu301-303)リピート数にGlu12/12ホモ型 、Glu9/9ホモ型、Glu9/12ヘテロ型の3つのタイプの頻度に注目した。興味深いことにほとんどのNMS患者ではGlu9/12ヘテロ型とGlu12/12ホモ型に持つ遺伝子タイプであった。また、Glu9/12ヘテロ遺伝子型とGlu12/12ホモ遺伝子型をもつ患者のAC活性量の平均値を調査したところ、ヘテロ遺伝子型患者のAC活性量が高かった。そして、健常者のGlu12/12ホモ遺伝子型とGlu9/12ヘテロ遺伝子型の平均値との比較では、NMS患者のAC活性量は、どちらの遺伝子型ともに高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究計画書通りに研究が進んでいる。その理由として、我々はこれまでにアドレナリン受容体遺伝子(ADR-α2B)多型解析でGiα-タンパク質共役受容体 (GPCR)における結合エネルギーの違いから、血管収縮に関与するAC活性への抑制時間がNMS発症との関連性があることを報告した。さらに、27名の患者に対し、ヘッドアップチルト試験(HUT)を行い、血管平滑筋収縮機能に深く関わるAC活性量を調査したところ血中活性量が健常者に比べ大きく異なり発症予防と治療に役立つ可能性があることを見出した。特に血管抑制型の患者では顕著にその差が確認でき、ヘッドアップチルト試験時の血圧、心拍、AC活性量の関連について確認することができた。さらに、NMS患者からコーヒーや緑茶などの摂取量とNMS発症との関連性の基礎調査を行うことができた。このことはAC活性量との関連からNMS発症を抑える手がかりを知るうえで重要であると考える。また、ADR-α2B遺伝子のGluリピート数(Glu12とGlu9)多型の頻度と遺伝子型別によりAC活性量変動を調査することができたことで、AC活性量の変動と遺伝子診断を見据えた新たなNMS診断が確立できる可能性を見出すことができた。このことから研究計画が順調であると判断した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するために次の①~④項目について実施する。 ①調査人数を増やすことで、NMS患者と健常者間のアデニールシクラーゼ(AC) 活性量比較調査を行う。そして引き続き相関解析を実施する。 ②アドレナリン受容体(ADR-α2B)遺伝子のアミノ酸配列内に見られるグルタミン酸Glu (E:p.Glu301-303)リピート数;Glu12/12ホモ型 、Glu9/9ホモ型、Glu9/12ヘテロ型の3つのタイプの頻度に注目し、それぞれのアデニールシクラーゼ(AC) 活性量の違いについて調査を行う。 ③NMS患者及び健常人のADR-α2B遺伝子のGluリピート数の遺伝子型頻度を算出し、タイプ別遺伝子型頻度を算出する。そして遺伝子頻度を算出することで、日本人内におけるNMS頻度を導き出す。 ④ABI Prism 3730xl DNA sequencerと次世代シーケンサーMiSeq (Illumina)を使用した全カテコラミン受容体遺伝子内の多型(変異)の確認を行うことでNMS発症関連遺伝子の網羅的調査を行う。
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Causes of Carryover |
今年度における使用計画としては、実験用試薬、消耗品、学会成果発表、ボランティアへの謝金に用いる。
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