2020 Fiscal Year Research-status Report
心臓脂肪組織のセクレトーム解析による心房細動の病態の解明とバイオマーカーの探索
Project/Area Number |
20K08501
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
原田 将英 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (70514800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井澤 英夫 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80402569)
高木 靖 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80324432)
尾崎 行男 藤田医科大学, 医学部, 教授 (50298569)
渡邉 英一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80343656)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心房細動 / リモデリング / 心外膜脂肪組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は開心術(冠動脈バイパス術、弁置換術)が予定され、術前に同意が得られた患者を本研究に登録した。患者情報(基礎心疾患、併存疾患、BMIなど)を収集し、血液検査、12誘導心電図、心エコー、心臓CTなどを行い、心房周囲の心外膜脂肪組織(EAT)の量、心房容積を計測した。。心房リモデリングの程度や心房間での差を臨床評価した。12誘導心電図の波形から洞調律群(SR群)と心房細動群(AF群)に分類しところ、SR群に比較してAF群で有意にEATの量が増加し、それに伴って心房リモデリングの指標である左房径が拡大していた。またEATの量と心房径の左右の心房間での差はAF群で有意に大きかった。 上記患者から、術式の一環として切開・切除され不要となった心房・心耳組織(EATが付着した心房、心耳組織)を採取し、凍結保存を行った。また、術当日の出棟前には研究用血液検体を採取し血清・血漿も凍結保存した。左心耳と右心耳の両方の組織を採取できたAF患者において、NGSを用いた遺伝子の網羅的解析とタンパクのプロテオミクス解析を行い、心房細動によるリモデリングが進行した心房において左心房と右心房の心耳組織において有意に発現量が異なる遺伝子とタンパクを調べた。また、遺伝子・タンパクともバイオインフォーマティクスを用いてパスウェイ解析を行った。結果、線維化関連シグナルや細胞増殖関連シグナルの活性化が左心耳組織と右心耳組織で大きく差を認めることを見出した。また、過去のゲノムワイド関連解析によって報告された心房細動の発症リスクと関連する幾つかの遺伝子の発現が右心房に比べて左心房で有意に発現が亢進していることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
組織の採取が可能な心臓外科疾患の患者の当初の予定より数が少なく、2020年度に予定していた全ての実験解析を行うのに十分な検体の数が足りていない状況である。また、2020年度に予定していた実験に先立って、予備研究として次世代シーケンサーを用いた遺伝子の網羅的解析とタンパクのプロテオーム解析を行い、バイオインフォーマティクスを用いたパスウェイ解析を追加した。当初の予定していた実験に関しては多少進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は遺伝子の網羅的解析とタンパクのプロテオーム解析から新知見を得た。これにより、新たな機序の仮説と方向性も見いだされた。2021年度においても順次対象となる患者を登録し、予定していた全ての実験と網羅的解析を基にした新たな仮説の検証実験を十分に行えるだけの検体数を採取する予定である。 2021年度にはEATの組織培養とサイトカイン・アディポカインアッセイキットを用いた分泌タンパク(セクレトーム)の解析を行う。また、組織染色による評価(ヘマトキシリンエオジン染色、Masson Trichrome染色、Oil red O染色)を行い、心房線維化やEAT脂肪細胞の心房組織への浸潤、EAT脂肪細胞や脂肪滴の形態を評価する。そして、網羅的解析、セクレトーム解析、組織染色評価から、心房リモデリングにおける左心房と右心房での役割の違い、神経液性調節組織として右心耳・左心耳の役割につき評価する。また、網羅的解析から遺伝子とタンパクの発現で解離を認める分子も多数認められ、両心房や心耳の機能におけるマイクロRNAの役割も解析に加えていく。さらに、心房細動リモデリングの進行に伴って左右の心房間で大きく差を認める遺伝子・タンパクに関しては、血清や血漿における発現も評価し、バイオマーカーとしての有効性も評価していく。
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Causes of Carryover |
2020年度はCOVID-19感染の拡大によって受診患者する減少し、例年に比べて対象となる疾患の心臓外科手術数がやや少なかった。このため、当初の予定より採取する検体の数が少なかった。また、予定していた実験に先立って、予備実験として遺伝子・タンパクの網羅的解析を行った。このため、2020年度に行う予定であった組織染色やセクレトーム解析を行うための試薬やキットなどは未購入である。上記理由のため未使用額が生じた。
使用計画:遺伝子・タンパク抽出キット、次世代シーケンサーを用いた用いたマイクロRNAの網羅的解析、PCRプローブ、ウエスタンブロッティングや免疫染色用の抗体、セクレトーム解析キットなどには相応の費用がかかると想定される。未使用額はこれらに充填する予定である。
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