2020 Fiscal Year Research-status Report
Significance of LGR6 expression induced by Wnt pathway activation in lung cancer
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20K08533
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
砂長 則明 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (70400778)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
CTNNB1遺伝子変異陽性かつLGR6高発現を示す非小細胞肺癌細胞株A427は、浮遊系と接着系の二相性の細胞増殖形態を呈する。これまでの研究結果から、A427細胞の浮遊系細胞成分は接着系細胞成分と比較してLGR6発現レベルが約7倍高いことが明らかとなり、肺癌において癌幹細胞特性であるスフェロイド形成能の獲得にLGR6が寄与していることが示唆された。そこで、LGR6がスフェロイド形成能を誘導する機序を明らかにするため、アジレント社のマイクロアレイ解析により浮遊系A427細胞と接着系A427細胞の遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、SMARCA4、HMBOX1、NDPなどの幹細胞関連遺伝子群の発現が浮遊系A427細胞において著明にアップレギュレートしていることや、パスウェイ解析により「let-7 inhibition of ES cell reprogramming」、「preimplantation embryo」を含む複数の癌幹細胞関連パスウェイがスフェロイド形成能の獲得に関与していることが明らかとなった。 また、これまでの研究において同定されたLGR6関連遺伝子群のうち特に発現変動の強かった癌幹細胞マーカーCD44のリガンドであるオステオポンチン、腫瘍微小環境の制御に関わるサイトカイン(CCL5、CXCL8、IL1A)、細胞増殖因子IGF1に注目し、これらの遺伝子発現解析に必要なタックマンプローブとプライマーを含む試薬セットを準備するとともに、LGR6高発現非小細胞肺癌細胞株の中からCTNNB1変異を有する細胞株(HCC15、A427)、APC遺伝子変異を有するHCC2935細胞株、KRAS変異を有する細胞株(H1373、H157、H358)について、細胞培養およびRNA干渉実験のための至適条件を設定し、遺伝子発現解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肺癌においてWnt経路活性化により誘導されるLGR6過剰発現の意義を探索するため、最初にCTNNB1変異陽性非小細胞肺癌細胞株A427を用いた実験をすすめた。具体的には、A427細胞株を浮遊系細胞成分と接着系細胞成分とに分けて細胞培養を行い、其々の細胞からmRNAを抽出して、アジレント社のマイクロアレイ解析により浮遊系と接着系の細胞間で遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、肺癌において癌幹細胞性の獲得に関与する候補遺伝子群(SMARCA4、HMBOX1、NDPなど)を同定するとともに、複数の癌幹細胞関連パスウェイ(「let-7 inhibition of ES cell reprogramming」、「preimplantation embryo」など)を同定し、LGR6が癌幹細胞特性を誘導する機序の一端を明らかにすることができた。 一方で、これまでの研究において同定したLGR6関連遺伝子であるオステオポンチン(SPP1)、腫瘍微小環境の制御に関わるサイトカイン(CL5、CXCL8、IL1A)、細胞増殖因子IGF1などの遺伝子発現解析をすすめるための実験に必要なLGR6高発現肺癌細胞株(HCC15、A427、HCC2935、H1373、H157、H358)の準備や、遺伝子発現を評価するための定量RT-PCR法に必要なタックマンプローブの選定と至適実験条件設定を行いながら、実験解析中の段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
肺癌細胞株64株および不死化気管支上皮細胞株HBEC4を用いて、A427細胞株を用いたマイクロアレイ解析により同定された癌幹細胞関連遺伝子群(SMARCA4、HMBOX1、NDPなど)の遺伝子発現解析を行い、これらの癌幹細胞性関連遺伝子群とLGR6発現との関連性について検証実験をすすめる予定である。また、癌幹細胞性関連遺伝子群が高発現する肺癌細胞株を同定した上で、それらの肺癌細胞株を用いて、RNA干渉法による癌幹細胞性関連遺伝子ノックダウンが肺癌細胞のスフェロイド形成能、細胞増殖能、抗癌薬の薬剤抵抗性に与える影響を調べる予定である。また、LGR6高発現非小細胞肺癌細胞株(HCC15、A427、HCC2935、H1373、H157、H358)を用いて、LGR6関連遺伝子群であるSPP1、CCL5、CXCL8、IL1A、IGF1の遺伝子発現解析をすすめるとともに、RNA干渉法によるLGR6ノックダウンによりこれらの遺伝子発現が抑制するか検証実験をすすめる予定である。さらに、RNA干渉法による各LGR6関連遺伝子ノックダウンが、肺癌細胞の増殖や生存、遊走能に及ぼす影響についても機能解析をすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
実験に使用する肺癌細胞株、細胞培地、血清、細胞培養ディッシュなどの細胞培養に必要な試薬や器具、遺伝子発現解析に必要なPCR試薬などの実験物品費に関しては、これまでの研究において購入した保存試薬や凍結ストック細胞株を使用することで対応可能であったため次年度使用額が生じた。これらの研究費に関しては、これまでの研究結果により同定されたLGR6関連遺伝子群や、癌幹細胞関連遺伝子群の発現解析に必要なタックマンプローブ、遺伝子ノックダウンに必要なsiRNA、PCR試薬、細胞培養実験に必要な試薬と器具、機能解析に必要な試薬などの購入、研究成果を報告するための学会参加費用、研究成果論文作成の費用にあてる予定である。
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