2021 Fiscal Year Research-status Report
PLCεを標的とした呼吸器疾患の新たな治療法の構築
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20K08567
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
永野 達也 神戸大学, 医学研究科, 講師 (80624684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 善博 神戸大学, 医学部附属病院, 名誉教授 (20291453)
小林 和幸 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (50403275)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Rasシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
rasがん遺伝子産物Rasの標的蛋白質の一つであるホスホリパーゼCε (PLCε)は当研究科が発見し、セカンドメッセンジャーの産生を通じてシグナル伝達に関与し、またNF-κBを介する炎症や発がんに関与することを報告してきた。本研究の目的は、K-ras遺伝子変異陽性のNSCLCにおけるPLCεの役割を明らかにし、PLCεが治療標的になりうるかを明らかにすることである。ras誘導性のがんはヒトの悪性腫瘍の約20%と極めて高頻度に認められている。本研究成果は気管支喘息やNSCLCの新規治療法の開発に寄与するだけでなく、多くの炎症性疾患とK-ras遺伝子変異が関与する複数のがん種に応用展開され、生命予後を改善しうるものとして期待される。 まず、申請者の施設で飼育しているPLCεのKOマウスと、三重大学の鈴木昇准教授より提供を受け飼育を開始しているLSL-K-ras(LoxP-STOP-LoxP-K-RasG12V)マウスを交配させ、PLCε遺伝子改変K-ras(LSL-K-rasG12V/PLCεΔx/Δx)マウスモデルを作成した。 また並行して、ルイス肺がん由来細胞株による担がんマウスモデルを作成して、腫瘍増殖能、生存に与えるPLCεの遺伝子型の影響を調べた。これまでにPLCεの野生型16匹、ノックアウトマウス7匹について実験を行い、有意差には至っていないものの、PLCεの遺伝子ノックアウトマウスで腫瘍増殖が遅く、生存率が良い傾向があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験マウスモデルの作成に成功しており、概ね順調に進展していると言える、また、in vitroの実験を開始するための準備を進めており、すぐにでも細胞実験を開始できる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、Cre発現アデノウイルスを経気道的に感染させ、PLCε遺伝子改変K-ras(K-rasG12V/PLCεΔx/Δx)発がんマウスモデルを作成し、感染後24週間で肺組織を取り出し、PLCεの遺伝子型で腫瘍の個数に違いが見られるか病理学的に評価する。また、PLCεのWT、TGマウスの間で腫瘍の形成個数に差が見られないかも解析する。また、PLCεのがん細胞非自律的な作用を解析するために、Cre発現アデノウイルスを感染させてから4週間おきにマウスから肺組織を取り出し、このモデルで観察される好中球の浸潤や炎症性サイトカインの発現を免疫染色とqRT-PCRで解析し、PLCεが細胞非自律的にNSCLCの発がんに影響していないかを解析する。 さらに、3種類のKras遺伝子変異陽性NSCLC細胞株(A-549、Calu-1、SW900)に、PLCεに対する2種類のsiRNAをトランスフェクションさせ、PLCεをノックダウン(KD)して以下の解析を行う。 ①増殖能の解析:親株とPLCεのKD株をプレートに撒き、24、48、72、96と120時間後MTT色素で染色して490 nmの吸光度を測定し、両者を比較する。 ②細胞浸潤能・転移能の解析:親株とsiRNA導入48時間後の細胞株をバイオコートマトリゲル細胞浸潤チャンバー(細胞浸潤アッセイ)或いは、マトリゲルコートされていないチャンバー(細胞遊走アッセイ)に撒き、4時間後にマトリゲル基底膜マトリックスを通過してコンパニオンプレートに接着した細胞のコロニーの個数を計測する。 ③アポトーシスの解析:親株とsiRNA導入48時間後の細胞株を用いて、ウェスタン・ブロットでアポトーシス関連タンパクの発現を親株とPLCεのKD株とで比較を行う。発現に差が見られない場合にはネクロスタチンを用いてネクロプトーシスの関与を解析する。
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Causes of Carryover |
費用の掛かる細胞株を用いた実験が最終年度に残っており、また、マウスの数が増えるにつれて飼育管理費が高くなるため、次年度へ繰り越した。
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