2021 Fiscal Year Research-status Report
アスペルギルスと非結核性抗酸菌の細胞間コミュニケーションを介した難治化機序の解明
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20K08840
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
泉川 公一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (20404212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 将人 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (20713457)
田中 健之 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30432967)
高園 貴弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30716569)
角田 俊之 福岡大学, 医学部, 准教授 (70444817)
串間 尚子 福岡大学, 医学部, 講師 (90642497)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アスペルギルス / 非結核性抗酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非結核性抗酸菌とアスペルギルスのquorum-sensingを主体とした細胞間コミュニケーションに着目し、真菌や非結核性抗酸菌のautoinducer、二次代謝産物が、真菌や非結核性抗酸菌の増殖・バイオフィルム形成能や、免疫担当細胞、ならびに肺胞上皮細胞に与える影響、マウスにおける病原性への影響を検討する目的で以下の3つについて進めている。 1) in vitroにおける、アスペルギルスの増殖能、バイオフィルム形成能に対する非結核性抗酸菌の代謝産物や菌体外酵素の相互的作用をみることを目的とし、Mycobacterium aviumをはじめとしたM. intracellulare、M. kansasii、M. abscessusの4種類の非結核性抗酸菌の培養上清を抽出し、Aspergillus fumigatusのreference株であるaf293株と共培養する実験系を構築し、これら4菌種の培養上清が、A. fumigatusのバイオフィルム形成能を増強することを明らかにした。 2) ヒト気道三次元微少環境モデルを用いたMAC感染肺胞上皮細胞の免疫応答に対するアスペルギルスの二次代謝産物、autoinducerの影響をみる目的として、ヒト気道三次元微少環境モデルにおいて、II型肺胞上皮細胞株A549細胞にMACを感染させる予備実験を研究分担者と開始し、実験継続中である。 3) アスペルギルスに対するマクロファージの免疫応答と二次代謝産物やトキシンの影響をみるために、in vitro、in vivoにおける実験系を構築した。in vivoの実験系において安定した結果がでるように調整が終了し実験を継続している。 これらの研究により、難治性呼吸器感染症であるアスペルギルス症、非結核性抗酸菌症、特に共感染時の病態解明、新治療の開発に有用となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) in vitroにおける、アスペルギルスの増殖能、バイオフィルム形成能に対する非結核性抗酸菌の代謝産物や菌体外酵素の相互的作用をみる実験系においては、おおむね順調に進行し、非結核性抗酸菌の代謝産物や菌体外酵素がアスペルギルスのバイオフィルム形成能に影響を与えることが明らかになり、特定の物質を同定する検討を開始した。 2) ヒト気道三次元微少環境モデルを用いたMAC感染肺胞上皮細胞の免疫応答に対するアスペルギルスの二次代謝産物、autoinducerの影響をみる研究では、コロナウイルス感染症の影響もあり、研究分担者との対面の実験、コミュニケーションが十分ではなく、遅れを生じている。 3) アスペルギルスに対するマクロファージの免疫応答と二次代謝産物やトキシンの影響をみる研究においては、マウスを用いた慢性アスペルギルス症モデルで、マクロファージの免疫応答について、病理学的な検討を行えるようになり、おおむね順調に経過していると思われる。 今年度の取り組みについては、ヒト気道三次元微少環境モデルを用いた研究に遅れが生じているが、そのほかは、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1) in vitroにおける、アスペルギルスの増殖能、バイオフィルム形成能に対する非結核性抗酸菌の代謝産物や菌体外酵素の相互的作用をみる実験系においては、本形成能に最も影響を与える物質の同定を進める。一方で、非結核性抗酸菌症の増殖能やバイオフィルム形成能に対するアスペルギルスの二次代謝産物やトキシンの影響をみる実験系の構築を促進する。 2) ヒト気道三次元微少環境モデルを用いたMAC感染肺胞上皮細胞の免疫応答に対するアスペルギルスの二次代謝産物、autoinducerの影響をみる研究では、実験系の構築を急ぐために、可能な限り、研究分担者とのオンライン会議などで打ち合わせを行い研究を進める予定である。 3) アスペルギルスに対するマクロファージの免疫応答と二次代謝産物やトキシンの影響をみる研究においては、おおむね順調に経過しており、トキシン産生遺伝子欠損株も準備ができたため、予定通りの研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
1) in vitroにおける、アスペルギルスの増殖能、バイオフィルム形成能に対する非結核性抗酸菌の代謝産物や菌体外酵素の相互的作用をみる実験系においては、コロナ禍の影響もあり、試薬が入手しづらい状況にあり、当初の予定にある研究費を使用するに至らなかった。2) ヒト気道三次元微少環境モデルを用いたMAC感染肺胞上皮細胞の免疫応答に対するアスペルギルスの二次代謝産物、autoinducerの影響をみる研究では、学外共同研究者との共同研究について、予備実験は開始されているものの、十分に進めることができず、また、コロナ禍の影響で、実験試薬、消耗品の入手が十分できなかった。3) アスペルギルスに対するマクロファージの免疫応答と二次代謝産物やトキシンの影響をみる研究においては、実験で主に使用するマウスの入手にもコロナの影響があり、十分に使用できなかった。 以上が、次年度使用額が生じた主な理由である。使用計画として、実験に使用する消耗品や試薬に充てる予定である。
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