2020 Fiscal Year Research-status Report
短腸症候群に対する自己細胞のみからなる人工小腸による再生医療
Project/Area Number |
20K08931
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森山 正章 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (90815953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 桂太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (80404268)
小山 正三朗 長崎大学, 病院(医学系), 助手 (20815972)
谷口 大輔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (20773758)
町野 隆介 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (90728081)
富永 哲郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (60457546)
田浦 康明 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (60437887)
高木 克典 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90635856)
野中 隆 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30606463)
土谷 智史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30437884)
中山 功一 佐賀大学, 医学部, 教授 (50420609)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小腸 / 再生医療 / 人工小腸 |
Outline of Annual Research Achievements |
短腸症候群に対する治療には制限があり、医療及び医療工学が発達した現在でも、解決できていない。小児における短腸症候群の発生率は出産10万人に対して24.5と推定されており、その原因は壊死性腸炎、腸捻転、腸閉塞、神経節細胞欠損症など様々であり、その死亡率は30%といわれる。現時点で最終的な治療は小腸移植であるが、移植後の拒絶反応のコントロールが難しく、その5年生存率は50%である。したがって、致死的であり、代替治療が存在しないという点において深刻である。 自己細胞からなる人工臓器による再生医療は、理想的である。近年バイオ3Dプリンターが登場した。我々のバイオ3Dプリンターは、コンピューターにより、複雑な形状、様々な種類の細胞の組み合わせによる臓器作製が可能となった。これまで我々は、バイオ3Dプリンターを用いて、血管の構造体および複数の細胞を組み合わせた人工気管、人工食道の作製、ラットへの移植を行ってきた。これらは、早期から生体への生着が確認できた。また、上皮の延長による人工臓器の上皮化もみられ、移植後に機能を獲得していることが確認できた。これによって、この技術が他の消化管にも応用可能であると考えた。 これらのデータ、方法を元にして、今回の人工小腸も同様に作製が可能であり、移植、さらには機能性の獲得も十分に可能であると考えた。予備実験としてヒト細胞を用いて小腸様構造体を作製し、ラットに移植したところ(小腸-盲腸バイパス術)、長期の生存を確認でき、さらに移植した構造体の残存が確認できた。従って、今回の人工小腸作製に関する研究は、これらの研究の延長線上で行うことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は生体に近い複雑な小腸構造体の作製方法の確立を目標としていた。これまでのバイオ3Dプリンターを用いた人工気管、食道の作製と同様の手法を用い、小腸に必要な細胞種を用いて、生体に似た構造体の作製に当たり、臨床応用を目指してより採取が容易で、効果的な細胞ソースを検討してきた。これまで用いてきた、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨髄幹細胞に、さらに平滑筋細胞、神経細胞を組み合わせ、小腸の基本構造の作製を行った。各細胞の割合を変化させ、最適な組み合わせにて、小腸様構造体を作製した。2020年度中に組織学的評価および機械的強度評価を行う予定だったが、次年度に評価を予定している。 さらに2020年度はヒトiPS細胞由来の小腸型腸管上皮細胞を内層、その他の細胞群を外層に配置した生体小腸構造に近い構造体の作製も目標としていた。上記の基本構造体である平滑筋、線維芽細胞主体の構造体の内層に腸上皮細胞を積層し、小腸を模した構造体を作製した。内外層モデルをプログラミングし、小腸様構造体を作製しているが、iPS細胞を用いた構造体作製には至っていない。2021度中の完成を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度から引き続き、小腸様構造体の組織学的評価と機械的強度評価を行う。またiPS細胞を用いた構造体作製を行う。 今後は上記構造体を用いた動物実験を予定している。これまで得られたデータを元に、Fischerラットを用いて、初代培養による自己細胞を用いた人工小腸を作製後、自家移植が可能かを明らかにする。また、GFPラットより採取した細胞で作製した人工小腸で、生体内での移植臓器の細胞動態を解明する。 具体的には近交系であるFischer344ラットより各細胞を初代培養し、上記方法でScaffold-free人工小腸を作製し、Fischer344ラットへ移植する。評価としては組織学的評価(H&E染色、免疫染色;フィブロネクチン、α―SMA、ラミニン、S100、claudin-4, CYP3A、PCNAなど)および機械的強度を評価したのちに、人工小腸移植を行う。Fischer344ラットに小腸-盲腸バイパス術(図4)として自家移植を行う。2週間後、4週間後の生着状態を確認、評価する。具体的な評価としてはCTにて画像評価、組織学的評価(同上記)を行う。 2022年度には短腸症候群モデルへの人工小腸移植を予定している。小腸の80%切除したモデルを作製し、人工小腸を移植する。人工小腸あり群となし群で比較し、評価する。
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Causes of Carryover |
県外・海外との往来自粛により、学会等への旅費分が次年度繰越となりました。2022年度の学会参加等に使用予定です。
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