2020 Fiscal Year Research-status Report
脱細胞・再細胞による再生医療と異種移植によるハイブリッド気道移植モデルの開発
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20K08983
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
渡邉 洋之助 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (30457551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 智史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30437884)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
佐原 寿史 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (90452333)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 異種移植 / 脱細胞 / 拒絶抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
・脂肪幹細胞の単離・培養: まず、カニクイサルの腹部・鼠径部脂肪から、全身麻酔下に脂肪組織を無菌的に採取し、得られた組織から脂肪幹細胞の単離・培養に成功した。培養された細胞の増殖能は、投与に必要とする量に2週間程度で達することができた。ブタ気管支の脱細胞処理: 家畜ブタ由来の気管支を、左右いずれかの主気管支より1~2cm程度採取し、SDSを用いた浸透培養による脱細胞処理を行った。脱細胞化については、我々のプロトコールにより、脱細胞組織においては、上皮細胞が十分に除去され軟骨成分が主となっていることを、組織学的検査により確認を行った。 ・移植手術実験系の確立: ブタ脱細胞気管支を、サル気管上部に移植する実験においては、気管前壁を面状に切離し、結節縫合によるブタ脱細胞気管支グラフトの移植を行った。移植後に、携帯型細径気管支鏡による観察が可能であることを確認し、形態学的な検討を移植後も行えることを確認できた。いずれの症例でも覚醒はスムーズであり、覚醒直後も含めて特に周術期合併症は認められなかった(n=4)。 ・術後の免疫抑制療法は、ステロイド、タクロリムス、MMFの3剤療法であった。食思不振や汎血球減少は認めず、感染症の発症を疑うようなエピソードも認めなかったため、十分にフィージビリティがあるものと考えられた。 ・移植後、定期的に鎮静下の気管支鏡による移植グラフトの観察を行うことができた. 脂肪幹細胞非投与群と比して、投与群において、グラフトの色調の改善傾向や再上皮化が認められた。・移植後1ヶ月の時点でレシピエントを犠牲死させ、グラフトを摘出し、病理学的検査を含む検討を行った。病理学的検査からは、脂肪幹細胞非投与群と比較して、投与群において、リンパ球浸潤が少ない・軟骨破壊が少ない、など拒絶反応が少ない傾向にあることが確認され、脂肪幹細胞の拒絶抑制効果が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・脂肪幹細胞の単離・培養:カニクイサルの腹部・鼠径部脂肪から、全身麻酔下に脂肪組織を無菌的に採取し、得られた組織から脂肪幹細胞の単離・培養に成功し、特に採取に伴う合併症も認めなかった。 ・ブタ気管支の脱細胞処理: 家畜ブタ由来の気管支を、左右いずれかの主気管支より1~2cm程度採取し、SDSを用いた浸透培養による適切な脱細胞処理が可能であった。・移植手術実験系の確立: ブタ脱細胞気管支を、サル気管上部に移植する実験においては、サルに全身麻酔を導入した後に、移植用気管支と同程度の大きさに気管前壁を面状に切離し、結節縫合によるブタ脱細胞気管支グラフトの移植を行った。移植後に、携帯型細径気管支鏡による経気管挿管チューブによる観察が可能であることを確認し、形態学的な検討を移植後も行えることを確認できた。いずれの症例でも覚醒はスムーズであり、覚醒直後も含めて特に周術期合併症は認められなかった(n=4)。脂肪幹細胞の投与は複数回行った。・術後の免疫抑制療法は、ステロイド、タクロリムス、MMFの3剤療法であった。免疫抑制剤の副作用を疑うような食思不振や汎血球減少は認めず、感染症の発症を疑うようなエピソードも認めなかったため、十分にフィージビリティがあるものと考えられた。・移植後、定期的に鎮静下の気管支鏡による移植グラフトの観察を行うことができた。脂肪幹細胞非投与群と比して、投与群において、グラフトの色調の改善傾向や再上皮化が認められた。・移植後1ヶ月の時点でレシピエントを犠牲死させ、グラフトを摘出し、病理学的検査を含む検討を行った。病理学的検査からは、脂肪幹細胞非投与群と比較して、投与群において、リンパ球浸潤が少ない・軟骨破壊が少ない、など拒絶反応が少ない傾向にあることが確認され、脂肪幹細胞の拒絶抑制効果が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画: 上記結果の再現性を確認するべく、症例数を、必要最低限に留める予定であるが、追加する予定である。 脂肪幹細胞の投与においては、その投与される細胞数や移植後の投与回数について、既存の症例の解析結果から、変更を検討する。また、脱細胞処理とその後のグラフト保存については、脱細胞後に凍結処理することで、凍結・投与前の融解処理に伴う、グラフトの抗原性の増大を回避できる可能性があり、この処理法についても解析を行う。病理学的検討については、抗ドナー抗体や、線維化マーカーを用いた免疫染色により、より詳細な免疫学的検討を行う。さらに実験期間中に採取・保存しておいたドナー・レシピエントそれぞれのリンパ球を用いたリンパ球混合試験や、レシピエント血清を用いた血清中抗ドナー抗体価、さらに炎症性サイトカインの測定等による、ドナーに対するレシピエントの反応性の経時的変化・定量評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ渦の影響により、出張計画等に変更が生じた。次年度は、コロナウイルス感染の拡大状況を考慮しながら、適宜出張等を計画したい。
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