2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on regulation of energy metabolism and sensitivity to chemo / radiotherapy in cancer stem cells
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20K09024
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
蒲池 浩文 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (60374237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深井 原 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (60374344)
折茂 達也 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (80711861)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所進行膵癌に対するゲムシタビンを用いた術前化学放射線治療にメトホルミンを加えた臨床試験の切除検体と、過去に実施したゲムシタビンを用いた術前化学放射線治療後の切除検体を用いて癌幹細胞の発現状況の検討を行った。 作業仮説ではメトホルミン投与群では癌幹細胞への殺細胞効果が誘導され、癌幹細胞の発現比率が低下していることを想定したが異なる結果が得られた。先行研究でCD133、ALDH1、CXCR4発現が術前化学放射線治療後の予後・再発に関連する癌幹細胞のKeyマーカーとして同定しているが、染色したEpCAM、ALDH1、CD133、CXCR4、CD44の癌幹細胞マーカーに関しては、メトホルミン投与・非投与群で、CD133、ALDH1に関しては差が無く、逆に肝転移に関与するとされるCXCR4においてはメトホルミン投与群で高い結果が得られ作業仮説と逆の結果となった。唯一、EpCAMの発現がメトホルミン投与群で低く、その低発現が無再発期間、予後に影響する因子となり作業仮説に合致した。いくつかの作業仮説と解離した結果に対し、古い検体と新しい検体の染色性、発現の評価方法に関し見直し再検討を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。 このため新たな視点での検討が必要と考えられ、メトホルミン投与における臨床的効果の裏付けのため、癌幹細胞の局所での濃縮、非癌幹細胞の癌幹細胞転換、上皮間葉転換、また新たな仮説として癌幹細胞の遊走性阻害等を検討する必要があると考えている。 また、癌細胞の遺伝子・タンパク発現は環境の変化で動的に変動するものであり、細胞集団の変化と環境の変化などの様々なパラメータの変化を反映しうる可能性を考慮し、各条件下での検討なども考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵癌術前化学放射線療法において、メトホルミン投与群では癌幹細胞のエネルギー代謝が抑制され殺細胞効果が増強することで臨床的な予後改善効果に結びつき、組織学的には癌幹細胞の発現比率が低下しているという作業仮説を立てた。しかし、EpCAM以外は想定した仮説と逆の結果が得られた。このため、免疫染色、評価方法に関し再検討を行ったが、結果としては大きな変化を認めなかった。 当初、作業仮説の裏付けとして各種膵癌細胞株を用いてエネルギー代謝の側面から、メトホルミンの癌幹細胞障害性の効果を検討課題としていたが、作業仮説とは異なる結果に対し、今後の研究の方向性に関し再検討が必要と考えられた。このため研究自体が遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体の免疫組織学的検討の結果として作業仮説と反する所見が得られたため、これらの現象の説明として、近年、前立腺癌、乳癌での放射線療法による癌幹細胞の局所での濃縮や、非癌幹細胞の癌幹細胞転換、上皮間葉転換、また新たな仮説として癌幹細胞の遊走性阻害などがメトホルミンの効果として関与しうるかを検討する必要があると考えている。 今後は、当初の計画のエネルギー代謝関連のメトホルミンの癌幹細胞への殺細胞効果の検証に加え、癌幹細胞の濃縮や遊走阻害など新たな視点での検討を行う予定である。また、癌幹細胞の様々な環境下でのマーカー遺伝子の発現状況の解析なども検討している。
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Causes of Carryover |
当初の作業仮説の変更の必要性も考え、検討に時間を要し、また研究協力者の国外留学のため実験が進まなかったため、次年度使用額が生じた。 来年度は、癌幹細胞の局所委縮、非癌幹細胞の癌幹細胞転換、上皮間葉転換、癌幹細胞遊走性阻害や治療に伴う遺伝子発現の変化などに関して検討を行うために必要なものの購入にあてる予定である。
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