2021 Fiscal Year Research-status Report
膵星細胞活性化遺伝子に着目した小胞体由来のオートファゴソーム膜起源の解明
Project/Area Number |
20K09036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂井 寛 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80611665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江上 拓哉 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40507787)
久保 真 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60403961)
中山 宏道 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80866773)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵癌 / 膵星細胞 / オートファジー / 小胞体 / 隔離膜 / 新規癌治療薬 / ERAP2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は膵星細胞(PSC)活性化遺伝子のうち小胞体に関わる遺伝子に着目し、オートファジー制御の観点から新たな膵癌治療薬を開発することを目的とする。手術切除標本から得られた膵癌組織由来の活性化ヒトPSC(M-PSC)と非膵癌組織由来の非活性化ヒトPSC(N-PSC)をマイクロアレイに提出し、遺伝子発現を比較した。M-PSC特異的に発現する遺伝子を複数同定し、その中で小胞体関連遺伝子に着目した。PSCと膵癌細胞(PCC)の両者において、小胞体関連遺伝子の1つである遺伝子ERAP2を、siRNAのトランスフェクションを用いてノックダウンすると、LC3の減少、p62の増加を認め、PSCおよびPCCのオートファジーが阻害された。また、PSCにおいてERAP2のノックダウンによりαSMAの低下、脂肪滴の増加を確認し、ERAP2のノックダウンがPSCの不活性化につながり、腫瘍と間質の相互作用が減弱したと考えられた。さらに小胞体ストレス誘導剤tunicamycinを投与すると、ERAP2をノックダウンしたPSCではunfolded protein response(UPR)シグナル経路のIRE1αおよびPERKが減少したため、ERAP2は小胞体のUPRシグナル経路を介したオートファジー制御に関与している可能性が示唆された。次に免疫不全マウスを用いたPSCとPCCの同所移植モデルにおいて、ERAP2をノックダウンしたPSCをPCCと共移植した場合、通常のPSCを共移植したコントロール群と比較して、腫瘍の形成が有意に抑制された。さらにゲムシタビンを投与するとERAP2のノックダウン群で腫瘍の増殖が有意に抑制され、ERAP2のノックダウンにより膵癌組織の線維化を抑制し、ゲムシタビンの抗腫瘍活性を増強したと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年に引き続きは小胞体関連遺伝子ERAP2に着目して研究を行い、遺伝子ERAP2がPSCのオートファジーを抑制し、小胞体ストレスを介したオートファジー制御に関与していること、また、膵癌細胞との同所移植モデルにおいて膵癌の増殖、線維化を抑制し、ゲムシタビンによる抗腫瘍効果を増強することを確認した。これらの結果から、、小胞体関連遺伝子ERAP2はUPRシグナル経路を介してオートファジーを制御しており、膵癌PSCにおけるERAP2は膵癌新規治療標的となりうる可能性があることを論文にまとめ、報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年に論文発表した遺伝子ERAP2以外の小胞体関連遺伝子を複数同定しているため、それぞれオートファジーの関与について同様に実験を行う予定である。また、PSCのみならず、PCCのERAP2を抑制した場合でもAutophagyを抑制することをin vitroで確認しており、癌細胞における小胞体関連遺伝子の影響も今後検討する。 さらに、前年度は免疫不全マウスを用いたin vivoの検討を行ったが、小胞体はMHC複合体の生成の場でもあり、ERAP2はペプチド合成にも関与していることが報告されているため、小胞体関連遺伝子を標的とした場合の免疫微小環境への影響も検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は培養用試薬、器材、免疫不全マウスなどの購入に使用予定である。
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