2022 Fiscal Year Annual Research Report
GSK3βを基軸とした食道発癌機構の解明と新規治療戦略の開発
Project/Area Number |
20K09100
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮下 知治 金沢大学, がん進展制御研究所, 研究協力員 (30397210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 哲生 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (40194170)
源 利成 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (50239323)
島崎 猛夫 金沢医科大学, 総合医学研究所, 准教授 (50377420)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食道発癌 / 逆流性食道炎 / GSK 3β / がん悪性形質 / がん微小環境 / STAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、GSK3β阻害による悪性形質と微小環境両面の制御に重点を置いた新規治療法の可能性を検討することを目的として実験を計画した。これまで十二指腸胃食道逆流ラットモデルを作成し、GSK3β阻害剤投与(GSK3inh)群と非投与(Cont)群に分け、40週目に屠殺して食道の病変を観察した。肉眼的にGSK3inh群ではCont群に比べて下部食道の拡張は軽微で、逆流性食道炎の所見は軽度であった。組織学的には、Cont群における腺癌の発がん率は67%であったのに対し、GSK3inh群には腺癌は認められず、有意に発生が低頻度であった(p=0.005)。また、Barrett上皮の形成はCont群の83%に対して、GSK3inh群が27%と、有意に低頻度であった(p=0.03)。さらに、M2型MΦの浸潤はがん部およびBarrett上皮部においてGSK3inh群はCont群に比べて有意に少なかった(p=0.05)。最終年度はヒト食道腺癌細胞株(OE33、OE19)と我々のラットモデルと同じ手法により自然発生した食道癌から樹立した腺癌細胞株(ESCC-DR、K14D)を用いて、GSK3β阻害剤AR-A014418による増殖活性と細胞毒性をMTTアッセイにて検討した。それぞれの細胞株におけるGSK3β阻害剤投与72時間後のIC50値を同定し、増殖活性と細胞毒性の濃度を測定した。次にそれぞれのIC50に基ずいたGSK3β阻害剤を投与し、ウエスタンブロッティングにてSTAT3およびpSTAT3の発現を検討した。結果はOE19、ESCC-DR、K14DではpSTAT3発現の低下が確認された。以上の結果より、GSK3β阻害剤の投与は逆流により惹起される慢性持続性食道炎と食道発癌を抑制するとともに、pSTAT3依存性免疫抑制性微小環境を改変する可能性が示唆された。
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