2021 Fiscal Year Research-status Report
誘導性肺前駆細胞を用いたBioengineered Lungの作成
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20K09174
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 隆哉 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (80611996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野津田 泰嗣 東北大学, 大学病院, 助教 (00636037)
大石 久 東北大学, 大学病院, 講師 (60451580)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオ人工肺 / 組織工学 / 人工幹細胞 / 呼吸器再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト臍帯血静脈内皮細胞(HUVEC)にmRNAを導入し、部分的リプログラミングを試みた。いくつかの条件を検討し、最適なトランスフェクションプロトコールを確認し、10-30倍の増殖能亢進を確認した。HUVECは本来幹細胞用培地では増殖しないが、このプロトコールによる培養では非常に急速な増殖を見ており、分化した血管内皮とは異なる性格を持っていることが示唆された。しかし完全な脱分化は起こらず、血管内皮マーカーの一つであるTie2の発現はリプログラミング中も保たれていた。当初の計画どおり、部分的リプログラミングによりHUVECの「前駆細胞化」が可能であることが示唆された。 同様の部分リプログラミングをヒト細気道上皮細胞(SAEC)を用いて行った。SAECはHUVECと異なり、mRNAトランスフェクションによる細胞死傾向が顕著であった。そこでトランスフェクションに際し線維芽細胞フィーダーの使用やmRNA曝露時間などの調整を行った。最適化を行った条件では、iPS細胞に類似した形態をもつコロニー形成細胞を認めた。このコロニー形成細胞は幹細胞用培地を2種類用意することにより異なった増殖傾向および表面抗原発現をもつ細胞へ変化した。そのうち一部は本来のSAECには発現の見られないサーファクタントプロテインの発現を見せるものがあり、単一の細胞群から複数の分化能をもつ「前駆細胞様」細胞が形成されたと考えられた。 マウス脱細胞化肺については脱細胞化プラットフォームを開発し、肺動脈・気管双方からの細胞注入と還流培養が可能となるシステムが出来上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
mRNAトランスフェクションによる部分リプログラミングの最適化により誘導された前駆細胞が作成可能であることが示された。並行してマウス肺を利用した脱細胞化プラットフォームが完成し、これらの人工前駆細胞を注入できる状況となった。本研究課題の1年目については新型コロナウイルス感染拡大によりかなりの実験制限があったが、本年度の成果は順調にすすんでおり、当初の目的を達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮系についてはHUVECのみならず肺毛細管血管内皮細胞(PVEC)を活用し、その部分リプログラミングによる誘導性前駆細胞様細胞の作成を試みる。誘導した前駆細胞と、誘導前の成熟内皮細胞を脱細胞化肺に注入し、その血管形成能を比較する。また同時に人由来気道上皮細胞をmRNAトランスフェクションにより誘導し、前駆細胞様細胞を作成する。プロトコールはiPS細胞誘導に使用されるプロトコールを参照にし、それよりも短い時間でのトランスフェクションを予定している。トランスフェクションした細胞の増殖能・多様性・分化能を2型上皮細胞用培地で培養することにより検証する。複数の系統の細胞が生まれることを確認し、これも脱細胞化肺に注入してバイオリアクターにより細胞分化能を検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる研究規制により2020年度の計画に遅れが生じていた。このため2020年度分に予定していた実験が2021年度に後ろ倒しされ、それにともなって支出計画にも若干の遅れが生じた。2021年度は順調に計画が進行しており、2022年度には当初計画されていた実験計画を完遂できる。
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