2021 Fiscal Year Research-status Report
傍脊椎神経ブロックによる側副血行増強に着目した新たな脊髄虚血保護戦略の検討
Project/Area Number |
20K09244
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山下 敦生 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (50379971)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 理 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (20610885)
松本 美志也 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60243664)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 脊髄虚血保護 / 胸腹部大動脈瘤 / 脳・神経 / 再灌流障害 / 側副血行 / 神経ブロック |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に購入した超音波診断装置を用いて家兎の傍脊椎神経ブロックが適切に施行出来るか検討した。全身麻酔、人工呼吸管理下の家兎の背部の毛を短く切り、脊柱と直行するようにエコープローベを当て、脊柱とその他の傍脊柱筋組織を描出した。エコー画像から脊椎横突起と考えられる構造物、胸腔内組織(肺)、腹腔内組織(消化管)を確認し、傍脊椎神経ブロックになると思われる部位に注射針を進めた。すなわち交感神経幹が走行すると考えられる脊椎横突起の腹側で、胸腔内組織や腹腔内組織の背側の空間にメチレンブルー溶液を第10胸椎レベル、第1腰椎レベル、第4腰椎レベルに2mlずつ注入した。その後家兎を安楽死させ、ホルマリンによる灌流固定を行い、メチレンブルー溶液の広がりを確認した。メチレンブルー溶液は椎体近傍の後腹膜領域に頭尾側の連続性をもって拡散していたため、家兎において超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックが可能であり、適切な施行方法も確立できた。 次に超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックにより脊髄血流が増加するか評価した。2020年度に確立した脊髄血流測定方法を用いた。すなわち全身麻酔下に家兎を伏臥位とし、腰部を切開し第5腰椎棘突起を切除して第5/6腰椎間から硬膜外腔に脊髄血流測定用グラスファイバープローブを挿入し、脊髄血流量をモニタした。この状況で1%リドカイン溶液を第10胸椎レベル、第1腰椎レベル、第4腰椎レベルに2mlずつ注入した。脊髄血流測定中は血圧が一定(平均動脈圧50~60mmHg)となるように吸入麻酔薬濃度を増減し、また体温(食道温、傍脊柱温)が一定(38℃)になるように加温装置を適宜使用した。注入後10分間に血圧、体温が一定であることを確認し、脊髄血流量を測定した。脊髄血流量は明らかな変化は認めなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は予定通り超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロック技術を確立した。その後、超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックによる脊髄血流測定を予定通り施行した。本来であれば複数回超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックによる脊髄血流測定を施行し、普遍的な結果が得られるまで実験を行う予定であったが、十分な実験回数を行うことが出来なかった。2022年度も継続して実験を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最初に超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックによる脊髄血流測定を複数回施行し、普遍的な結果が得られるように技術を確立する。その後従来予定していた超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックによる脊髄虚血保護効果の検討を行う。家兎の脊髄虚血方法は側腹部切開による後腹膜アプローチで腎動脈下の大動脈を15分間遮断し再灌流する方法で、以前から同様の方法にて研究を行っており、遅発性対麻痺が発生する実験モデルである。超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックを施行し、その後側腹部を切開し脊髄虚血を行う。対照群(生理食塩水注入)6羽と介入群(局所麻酔薬注入)6羽の計12羽で脊髄虚血保護効果が認められるか検討する。
|
Causes of Carryover |
家兎を用いた超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックによる脊髄血流測定を複数回実験する予定であったが研究室の移転などがあり出来なかった。そのため2021年度使用予定額まで研究費が使用できず未使用額が発生した。研究室の移転も完了したため、2022年度は2021年度の遅延した研究と2022年度予定していた超音波診断装置ガイド下傍脊椎神経ブロックによる脊髄虚血保護効果の検討を行う。1羽あたり約3万円の実験費がかかり、20羽の実験を行うと約60万円が必要で、未使用額と2022年度予算と合わせて適切になると思われる。
|