2020 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮細胞からARDSの病態を解明する-ヒストン修飾酵素SETDB2の意義-
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20K09310
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
園部 奨太 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90771808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北畠 正大 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60457588)
小田 朗永 奈良県立医科大学, 医学部, 特任助教 (80547703)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ARDS / 急性呼吸促拍症候群 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
急性呼吸促拍症候群(ARDS)は急性炎症に伴う血管透過性亢進を特徴とする予後不良の疾患であるが、その分子メカニズムはいまだに明らかとなっていない。急性炎症とエピジェネティクスが関係していることは以前報告されており、特にヒストンメチル化タンパクであるSetdb2がARDSモデルマウスの肺において発現上昇することを明らかにした。Setdb2は主にマクロファージと血管内皮細胞に発現上昇を認めたため、まずマクロファージ特異的にSetdb2を欠損させたマウスでARDSモデルを作成したが、明らかな症状増悪は認めなかった。続いて、血管内皮細胞特異的にSetdb2を欠損させたマウスでは、コントロールのマウス群と比較して明らかな症状増悪を認めた。その症状の内容としては肺実質への好中球浸潤の程度であったり、肺胞内への浸出液の程度、また全身の体重の比較であった。肺の炎症がより重症であったことから、肺への好中球集積・肺胞への浸出液の漏出が起こり、重症病態のため食事の摂食できずに体重の減少が起きたと考えられる。血管内皮細胞に対するSetdb2の役割は現時点では不明であるが、転写因子のNF-kBに対する作用が既出の研究結果から考えられており、当研究のARDSモデルマウスにおいても、その関与が示唆される。炎症が惹起され続けることにより、さらに血管内皮細胞の障害が起こり続ける可能性が高いが、そのスパイラルの中で、グリコカリックスが関与している可能性があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARDSモデルマウスが予想通りに作成できたこともあり、相当数の実験が行えた。実験の結果から、Setdb2を血管内皮細胞特異的にノックアウトした場合はARDSの症状が増悪していたため、その原因を遺伝子レベルから現在探索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ARDSの悪化と関連する、さまざまな原因遺伝子をPCR arrayを用いて検索していく。また、それらのELISAを行うことで、生成された蛋白の定量化も行う予定である。また、血管内皮細胞の障害とグリコカリックスの障害が関連しているかも同時にPCR,ELISAを中心とした手法で調べていく。
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