2021 Fiscal Year Research-status Report
くも膜下出血後早期脳損傷の軽減をめざして:エダラボンのドラッグリポジショニング
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20K09319
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
針生 新也 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (90866120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新妻 邦泰 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10643330)
遠藤 英徳 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (40723458)
伊藤 明 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (90867863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | くも膜下出血 / 急性期脳損傷 / エボラタン / ドラッグ・リポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
くも膜下出血は日本人に多くみられ、致死率および要介護率がそれぞれ40%または30%の未だに転帰不良の疾患である。その理由として、発症直後から手術治療に至るまでの間にも脳圧亢進や酸化ストレスなどに起因する細胞障害性変化が始まっており、くも膜下出血後早期脳損傷として注目されている。 本研究では脳保護薬であるエダラボンによるくも膜下出血後早期脳損傷の抑制効果を研究することを目的とした。エダラボンはフリーラジカルスカベンジャーとして、急性期の脳梗塞に対してすでに臨床現場で汎用されている薬剤である。 研究第一年度はendovascular perforationによるラットくも膜下出血モデルを作成し、レーザー血流計を用いた出血後の脳血流量低下の観測、エダラボン静脈内投与によるくも膜下出血24時間後の生存率の比較試験を行った。 第二年度は前年に得られたエダラボンの至適濃度の投与を行ったモデルを用いて、エダラボンがもたらす神経機能保護効果と組織学的な細胞障害抑制効果の評価を行うべく研究に取り組んだ。ラットくも膜下出血モデルの脳組織から抽出した蛋白質溶解液を用いて断片化DNAの測定を行い、アポトーシスの評価とした。sham群、vehicle群、エダラボン群について比較した結果、vehicle群に対してエダラボン群で断片化DNAは有意に低値を示し、アポトーシスが抑制されているという結果であった。上記実験に時間を要してしまったために組織染色によるアポトーシスの評価や神経機能の行動評価実施には至らず、遅延が発生した状況であるが、次年度以降に研究を加速させたい。、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ネクローシスではなくアポトーシスの評価を行うべく、アポトーシスによってもたらされる断片化DNAの定量をELISAにて測定した。sham群、vehicle群、エダラボン群(投与量を変えた複数群)について、くも膜下出血後誘導後24時間生存していた個体の脳を取り出してその大脳皮質から抽出した蛋白質溶解液の断片化DNAの測定を行った。結果、vehicle群に比較してエダラボン群(1mg/kg、3mg/kg投与)で断片化DNAは有意に低値を示し、アポトーシスが抑制されているという結果であった。一方で、一連の手技を複数群に行って結果を得られるまでに時間を要し、これ以上の研究進展には至らなかった。組織染色によるアポトーシスの評価や、神経機能の行動評価については、次年度以降に研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きラットくも膜下出血モデルの24時間生存個体の脳組織を用いて組織科学的な検討を多角的に追加していく。我々はくも膜下出血後早期脳損傷の機序にアポトーシスが重大な関与をもつと推測しており、アポトーシスがどういった経緯でもたらされるのかそのpathwayについての知見も深めるべく、過去に我々のグループが報告しているAkt/GSK3b survival pathwayとの関係についても解析を加えていきたい考えである。最終的に、エダラボンがくも膜下出血早期脳損傷の軽減すなわち脳実質のアポトーシスの防止や神経症状の増悪防止に効果をもつかどうか、その機序も含めて明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナにより学会参加ができなかったことにより、当初計画していた予算より使用が少なく済んだため、次年度使用額が生じました。次年度使用額については、学会参加や追加実験を行う際に使用する予定です。
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