2021 Fiscal Year Research-status Report
神経毒性蛋白排出障害による神経変性機序の解明と新規排出促進の理論基盤の確立
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20K09398
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中島 円 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50317450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 教授 (60200177)
新井 一 順天堂大学, 医学部, 教授 (70167229)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水頭症 / 脳脊髄液 / 脈絡叢 / 共輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
疾患動物モデルと患者を対象にしたトランスレーショナルリサーチを行なった。遺伝子改変により加齢にともない、脳室拡大を呈する複数の異なる成人慢性水頭症動物モデルを作製し、多次元イメージング、透明化脳標本を用いたコネクトーム解析を行い、形態学的特徴と高分子蛋白のクリアランスを検証した。また髄液検体、剖検脳標本から、髄液バイオマーカー、MRIによる髄液ダイナミクス解析、免疫染色、mRNA抽出により、実臨床で実証した。 【遺伝子操作による複数の異なる慢性水頭症動物モデルの作成に成功】 家族性正常圧水頭症の原因となるDNAH14遺伝子が、線毛運動に関与するダイニン内腕に発現し、その欠損が成人慢性水頭症の発症に関わっていることを発見した。さらに、脈絡上皮細胞でNa+-K+-2Cl- 共輸送体アイソフォーム1 (NNKCC1)の脱リン酸化に関与するプロテインチロシンフォスファターゼ非受容体タイプ20 (Ptpn20)の欠損が、長期間のリン酸化NKCC1の維持を誘導し、慢性水頭症を発症させることを初めて明らかにした。この慢性水頭症モデルでは、 脈絡叢での Ptpn20欠損が、共輸送体を介した水輸送による 膠質浸透圧の調整機能に影響したと推察された。 【脳脊髄液動態の停滞がβアミロイド凝集を促進】 脳脊髄液動態は、脳活動で産生された老廃物の排泄に重要な役割を担うことが明らかとなり、生理活性蛋白の脳内クリアランスが認知症疾患の発症と深いかかわりが推察される。我々は今回正常圧水頭症患者の脳脊髄液中のβアミロイド蛋白の測定データから、 βアミロイド凝集が亢進されていることを発見した。また、脳外科治療である脳脊髄液シャントは、 βアミロイド凝集に抑制的に働いている可能性を示した。本研究成果より、慢性水頭症の病態下では、脳脊髄液と共に生理活性タンパク質の排泄機能が低下していることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAH14遺伝子欠損モデルとPtpn20欠損モデルの作製に成功し、双方とも形態的に慢性水頭症モデルとして一定の成果が得られたことから、本研究の進捗はおおむね順調に進展していると考えている。慢性水頭症モデルは加齢性変化に伴い発症するため、飼育期間が長期になり、検証に時間がかかることが今後の課題である。現在24週齢で野生型マウスと比較し、有意に脳室拡大を呈し、水頭症を発症していることが確認されており、24週、48週と経過観察機関を長くすることで、症状の変化を追うため、研究期間内に成果を出すためにはモデル動物を数多く作成する必要が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はこれまで取り組んだ慢性水頭症モデルについて論文報告する。PTPN20欠損モデルは英科学雑誌 Fluids and Barriers of the CNS に投稿中であり、DNAH14KOマウスについても国際ジャーナルにて論文投稿を準備している. さらにDNAH14欠損マウスおよびPTPN20欠損マウスと遺伝子組み換えにより作成されたアルツハイマー病モデルであるAPP ノックイン(KI)マウスを交配し、「加齢と共にアミロイドβが脳内に蓄積される脳脊髄液代謝の停滞した慢性水頭症動物モデル」の作成に成功した この新しく作成したモデルマウスについても解析を進め、論文発表へ進める予定である。 実験系では、新たに脳内クリアランス機構の障害の解明は、脳内に蛍光物質を注入し、In Vivo Imaging Systemを使用し、生体のまま蛍光シグナルを測定する.拡散の経過を観察することで脳内クリアランスの低下を証明する.注入する蛍光物質はアミロイドβ(4kDa)やリン酸化タウ蛋白と同程度(約50kDa)の分子量のものを使用し、脳内アミロイドβやタウ蛋白の排泄を仮想する。作成したモデルマウスの認知機能を行動実験とマルチ電極アレイによる海馬組織の長期増強(long-term potentiation:LTP)実験によるシナプス可塑性の評価によって、モデル動物におけるアミロイド蛋白の排泄障害と蓄積が、記憶・学習過程の障害を生じることを証明する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による国際学会、国内学会への出張が、すべてweb会議による開催となったことから旅費に計上した予算は大幅に減算された。また、予定していた他施設での動物実験も中止となり、動物輸送費が減算された。試薬などの消耗品も、海外からの流通が途絶えた期間があった。今後徐々に流通が再開しており、試薬等は次年度分に計上する。
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[Journal Article] Neuropathological findings in possible normal pressure hydrocephalus: A post-mortem study of 29 cases with lifelines2022
Author(s)
Joni Hanninen, Madoka Nakajima, Aleksi Vanninen, Santtu Hytonen, Jaana Rummukainen, Anne M. Koivisto, Olli-Pekka Kamarainen, Juha E. Jaaskelainen, Hilkka Soininen, Anna Sutela, Ritva Vanninen, Mikko Hiltunen, Irina Alafuzoff, Ville Leinonen, Tuomas Rauramaa
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Journal Title
Free Neuropathology
Volume: 3
Pages: 1~17
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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