2021 Fiscal Year Research-status Report
Runx2,3による関節軟骨の統合的制御機構の解明
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20K09451
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 優樹 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80722165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
大島 寧 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50570016)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Runx2 / Runx3 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の急速な高齢化により運動器変性疾患の患者数は増え続けている。OAはその代表的な疾患であるが、本質的な治療法を産み出すには至っていない。申請者らのグループでは変形性関節症のin vivoでの解析を可能にすべく世界に先駆けてマウスOAモデルを樹立し(Osteoarthritis Cartilage 13:632-41,2005), その後もOAの分子生物学研究を牽引してきた。軟骨を変性させるシグナルの一つに軟骨内骨化が挙げられるが、その中心に位置するのが転写因子Runx2である。骨格成長過程においては、Runx2は骨芽細胞の発生に必要不可欠であることは有名だが、軟骨細胞の後期肥大分化過程においてはそのファミリー分子Runx3と重複、協調して促進的に作用することが報告されている。我々はこれまでの研究で、Runx2は関節軟骨の深層側に、Runx3は表層側に発現すること、Runx3をノックアウトするとOAが進行すること、Runx3にはRunx2のような肥大分化促進作用はなく、関節表層の潤滑性を担うルブリシンを誘導しうることなどを突き止めた。2つのRunxが異なる部位で異なる作用を発揮しているという仮説のもと、本研究では、表層特異的Prg4-CreERT2、深層特異的Lect1-CreERT2とRunx2, 3-floxを交配させ、in vivoでそれぞれの作用を解析する。同時に表層、深層の関節軟骨由来の初代培養細胞を用いてChIPシーケンス、ATACシーケンス、RNAシーケンスを行い、2つのRunxの転写標的を比較検討する。またRunx結合部位周辺のゲノム配列解析とLC-MSによって、それぞれの共役分子の同定に挑む。これらの一連の研究によって、成体関節軟骨の維持とOA発症にRunx2, 3がどのように作用しているかを明らかにする。これまでのRunx3を中心とした内容でアメリカ骨代謝学会に報告し、2019年にAwardを受賞するに至った。現在論文投稿中であり、revise中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は関節軟骨におけるRunx2, 3の作用をより詳細に調べるため、それぞれの発現部位を解析するとともに、軟骨全体でCreを発現するCol2a1-CreERT2マウスとRunx2, 3のfloxマウスを交配させてOAの解析やin vitroでの解析を行った。また表層特異的Prg4-CreERT2とRunx2, 3-floxを交配させ、骨格成長後の10週齢にタモキシフェンを注射してそれぞれのRunxをノックアウトし、各種モデルを用いてOAの進行を解析した。さらにモデルとしては、18か月齢までのエイジングモデルのほか、内側側副靱帯と内側半月板を切除して関節不安定性を惹起させるMedialモデル、DMMモデルを用いた。組織学的検討のほか、関節軟骨表層と深層からmRNAを回収して発現量を定量解析を行なった。その結果、Runx2は関節軟骨の深層側に発現し、軟骨保護因子と基質破壊因子の両方の発現に関わること、Runx3は表層側に発現して軟骨全層でノックアウトするとOAは進行すること、Runx3にはRunx2のような肥大分化促進作用はなく、関節表層の潤滑性を担うルブリシンを誘導しうることなどを突き止めた。我々はこれらの基礎検討の結果から、成体関節軟骨におけるRunx2, 3の作用は骨格成長過程のような重複的なものではないと考え、「表層のRunx3は保護因子の転写を誘導する」、「深層のRunx2は軟骨基質タンパクと適切な骨化誘導因子を誘導する」、と2つのRunxがそれぞれ部位特異的な役割を担うことによって関節軟骨を維持していると仮説を立て、実験をおこなってきた。ChIP-seq, RNA-seqは成功し、データを統合している。またRunx3が特に保護因子と考えて、アデノウイルスで強制発現させて、OAを予防できるか検討した。これまでのRunx3を中心とした内容でアメリカ骨代謝学会に報告し、2019年にAwardを受賞するに至った。現在論文投稿中であり、revise中である。
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Strategy for Future Research Activity |
既に我々は、その結果、Runx2は関節軟骨の深層側に発現し、軟骨保護因子と基質破壊因子の両方の発現に関わること、Runx3は表層側に発現して軟骨全層でノックアウトするとOAは進行すること、Runx3にはRunx2のような肥大分化促進作用はなく、関節表層の潤滑性を担うルブリシンを誘導しうることなどを突き止めて、論文投稿中である。Runx3の肥大分化に与える影響についても、in vivoでの検討を重ねている。Runx2, 3はタンパクの構造は類似しており、ゲノムに結合する際のコンセンサス配列は共通であると考えられている。骨格成長過程とは異なり、成体関節軟骨においては発現部位が異なること、Runx2のヘテロノックアウトでOAは抑制されるが、関節軟骨全層でのRunx3のノックアウトではOAは促進されるといった表現型が異なることから、成体関節軟骨におけるRunx2, 3の作用の全貌を解明するために本研究を立案した。 今後はChIP-seqを既存の報告にある軟骨形成に重要な転写因子Sox9のChIP-seqと組み合わせることにより(Ohba S, Cell Report, 2015)、Runx2/3とSox9の相互作用についても明らかにする方針である。実際にSox9の結合部位とRunx motifは近傍にあることをChIP-seqで確認しており、これまで軟骨変性因子として考えられてきたRunx2が、実は炎症反応下で保護因子のCol2a1の転写を誘導していることを証明しつつある。またRunx2を強く抑制すると、軟骨アポトーシスが早期に進行することをin vivoで解明した。この候補として、初期の軟骨細胞の維持に関わるIhhの関連に注目して、今後RNA-seqの結果の再検討やin vitroでのエンハンサー解析などの追加実験を予定している。 本研究はRunxのみならず、関節軟骨の転写制御機構の全体像を紐解く上でも大きく貢献するであろう。
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Causes of Carryover |
本研究は予定通り進捗しているが、必要以上に経費をかけずに済んだ。現在論文投稿中であり、次年度は追加の免疫染色・論文投稿費用に使用予定である。
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[Journal Article] Involvement of Transient Receptor Potential Vanilloid Channel 2 in the Induction of Lubricin and Suppression of Ectopic Endochondral Ossification in Mouse Articular Cartilage2021
Author(s)
Nakamoto H, Katanosaka Y, Chijimatsu R, Mori D, Xuan F, Yano F, Omata Y, Maenohara Y, Murahashi Y, Kawaguchi K, Yamagami R, Inui H, Taketomi S, Taniguchi Y, Kanagawa M, Naruse K, Tanaka S, Saito T.
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Journal Title
Arthritis Rheumatol.
Volume: 73
Pages: 144-11450
DOI
Peer Reviewed
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