2020 Fiscal Year Research-status Report
ガス状シグナル物質の複合的投与による移植腎保護効果と機序の解明をはかる前臨床実験
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20K09542
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
有吉 勇一 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 学外協力研究者 (10643520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐原 寿史 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (90452333)
関島 光裕 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任助教 (20568589)
岩永 健裕 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任助教 (40518916)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 移植・再生医療 / 虚血再灌流障害 / 腎移植 / ミニブタ / 一酸化炭素 / 硫化水素 / 心停止ドナー / 前臨床実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、臨床医療に即した心停止ドナーからの臓器移植を想定した前臨床ミニブタ腎移植実験モデルを用いて、ドナー臓器保存時にガス状シグナル物質である一酸化炭素(CO)や硫化水素(H2S)を複合的に直接投与する高い安全性のもとで、虚血再灌流障害(IRI)抑制に代表される急性障害のみならず、臓器生着期間の延長効果の評価と作用機序の解明をはかるものである。COやH2Sは相互に有効性を補完しうる一方で、投与部位や環境によって、複雑なクロストークから作用を減ずる可能性もあるため、大動物を用いた前臨床移植実験として、どのような投与が効果的であるのかを明らかにする実験を行う。
今年度は移植手術に先立ち、クラウン系ミニブタを用いて、すでに確立している簡便な腎IRIモデルを基に、COの有効性を評価する実験に着手した。腎IRI実験では、これまでの論文報告から、H2S放出物質の腎動脈への選択的投与が効果的であることを明らかにしていたが、この実験は100%酸素投与下の実験であり、かつ若い個体を使用して実験を行っていた。CO投与の効果だけでなく安全性を評価する際には、高濃度酸素下では血中COHbの解離が進みやすく安全である一方、長時間の高濃度麻酔では肺障害が懸念されること、また動物の年齢により腎血管の加齢変化や腎実質変化によってIRIの程度も異なる可能性があることなどを考慮して、前臨床実験としてより適切な実験条件の探索を行った。この結果、100%酸素投与下と30%酸素投与下での腎IRIの程度に差はみられないことを明らかにした。一方高齢になるに従い、腎IRIはやや遷延する傾向が認められた。従って本研究テーマを臨床応用に近づけるためには、特に動物の年齢も考慮に含めた検討が必要であることが明らかとなり、これを勘案した実験計画を立案する方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は目的とする移植モデルでの評価に先立ち、これまでに考慮していなかった観点をもとにして実験条件の再設定を行った。従って研究計画の遂行という観点からは遅れを生じていると判断するものの、臨床医療につなげる実験系の確立という観点としては、重要な知見を得ており、今年度の成果を次年度以降の研究進捗につなげたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
腎IRIモデルにおけるCO有効性評価(投与方法や濃度等の検証)を行った後に、研究計画に従い、心停止モデルに対するCOとH2Sの投与を行う、特にH2Sについては経腎動脈的投与が優れていることが明らかになっているため、灌流保存時に投与する方法を第1選択として研究を進める。
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