2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K09670
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森岡 裕香 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (00360264)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胎盤 / 鉄代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
①遺伝子欠損が胎仔肝に与える影響の解析 : 先行研究により、独自に作製したノックアウトマウスの胎盤では、同腹に存在する野生型マウスの胎盤と比較して、鉄代謝遺伝子の発現が亢進していることを見出した。本年度は、胎仔肝についても解析を行った結果、胎盤と同様に野生型よりもノックアウトの方が、鉄代謝遺伝子の発現が高いことが確認された。妊娠マウスの血中鉄濃度が母体の肝臓のみならず胎盤の鉄代謝因子にも影響を与えることが知られているが、ノックアウト、野生型とも同じ母体血にさらされているため、この発現亢進には遺伝子欠損が直接起因している可能性が示唆された。
②母体血中鉄濃度の変化が胎盤・胎仔肝の鉄代謝遺伝子発現に与える影響の解析 : 「遺伝子を欠損した胎盤でも、母体血中鉄濃度の変化に正しく応答できるのか?」を調べるため、ノックアウトと野生型の仔を妊娠した母マウスに、鉄欠乏または鉄過剰といった鉄調整食を与えて母体血中鉄濃度を変化させた際の、胎盤・胎仔肝の鉄代謝遺伝子発現を解析した。交配の1週間前から全妊娠期間にわたって鉄調整食を与えた結果、胎盤・胎仔肝における鉄代謝遺伝子の発現変動が認められたが、ノックアウト、野生型のいずれも同様の増加・減少パターンを示し、遺伝子を欠損しても母体血中鉄濃度変化に対する反応性は維持されていることが明らかになった。これは、昨年度に得られた、培養胎盤細胞を用いて行った解析の結果とも一致する知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた結果は予想に反するものであったが、計画していた実験は順調に進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果からは、ノックアウトマウスの胎盤・胎仔肝で鉄代謝遺伝子の発現が亢進するメカニズムの解明には至っていないため、引き続き検討を行う。特に、培養細胞を用いた実験では不可能な、胎盤と胎仔肝の相互作用に焦点を当てた実験を、動物個体を使用して進めるとともに、遺伝子発現だけではなく、実際の鉄含有量の変化についても解析を行う。 具体的には、「胎盤特異的な遺伝子操作」により、胎盤または胎仔のみで遺伝子を欠損させたマウスを作製し、それぞれに認められる表現型が独立した機序で起こっているのか、何らかの関連があるのかを明らかにする。 胎盤特異的な遺伝子操作には、マウス初期胚に効率良く遺伝子導入可能な高力価レンチウイルスベクターが必要となるため、Cre、FLPeにコントロールのEGFPを加えた3種類のベクターの作製に着手している。Creに関しては、毒性のため持続的に高発現させると胚性致死になることが知られているため、ゲノムに組込まれることなく一過性の発現を示す変異型レンチウイルスベクターの利用を計画している。
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