2021 Fiscal Year Research-status Report
低侵襲な中耳粘膜再生技術による中耳真珠腫根治へ向けての研究
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20K09725
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
伊藤 吏 山形大学, 医学部, 准教授 (50344809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 俊憲 山形大学, 医学部, 客員研究員 (80536954)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中耳粘膜再生 / 慢性中耳炎 / 真珠腫性中耳炎 / 経外耳道的内視鏡下耳科手術 / 再生医療 / モルモット |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に対する根治治療は手術治療のみであるが、術後の中耳換気不良にともなう鼓膜陥凹や中耳癒着は、術後聴力の低下や真珠腫性中耳炎の再形成性再発の一因となり、これらの予防は臨床上とても重要である。これまで術後の中耳換気能回復を目指して、段階手術による含気腔の形成などが試みられているが、十分な効果が得られていないのが現状である。このため、聴力改善と真珠腫再発抑制を兼ね備えた新しい治療法が求められている。本研究はその第一歩として、中耳粘膜障害動物モデルを利用して、低侵襲で臨床応用可能な中耳粘膜再生治療を開発することが目的である。 これまで中耳粘膜再生に関する基礎研究の報告は少なく、組織工学の技術を用いて自己粘膜細胞を培養した粘膜シートを移植した研究などが報告されているが特殊技術、費用、準備期間などの観点で実践的な治療法の報告はない。我々は中耳粘膜再生に関する基礎研究の第一歩として、モルモットを用いて低侵襲な経外耳道的内視鏡下操作により中耳粘膜に限局した障害を起こす中耳粘膜障害モデルを独自に開発した。さらにこの障害モデルに対して、ラビット副鼻腔粘膜で再生効果が報告されているビタミンA誘導体(レチノイド)を中耳粘膜障害モデルに投与し、線毛上皮細胞様の再生を確認することができた。免疫組織学的検討では、この細胞は線毛のマーカーであるチュブリン陽性、上皮細胞マーカーであるカドヘリン陽性であった。今年度はさらにレチノイドの至適濃度について条件検討を行い、0.02%が線毛上皮の再生率がもっとも高いことが確認された。また線毛の機能評価のため、再生した線毛上皮をハイスピードカメラで撮影し、正常粘膜と比較したところ、再生した線毛上皮は正常粘膜と同等の運動機能を有していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モルモット中耳粘膜障害モデルに投与するレチノイドの至適濃度について、0.01%、0.02%、0.05%、0.25%と条件検討を行った結果、0.02%が線毛上皮の再生率が高いことが確認できた。さらに濃度を高くすると、副反応として中耳腔内の肉芽組織増生を認めたため、0.02%が総合的に見て至適濃度であることが明らかとなった。さらに研究を進め、ハイスピードカメラを用いて再生上皮の線毛の運動機能を評価することができた。線毛運動周波数(CBF)を指標として検討を行ったところ、レチノイドにより再生した線毛上皮のCBFの平均値は正常粘膜のCBFの平均値と有意差を認めず、同等の運動機能を有していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、中耳粘膜再生におけるレチノイドの作用機序の解明のため、中耳粘膜のレチノイドの受容体の発現について検討する予定である。さらには、臨床応用にむけて、レチノイドの内耳毒性の有無についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、当初現地参加予定の学会のほとんどがオンライン参加もしくはキャンセルとなったため。
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