2021 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫応答を介した蝸牛内炎症により生じる難聴の病態およびメカニズム解明
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20K09729
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
中西 啓 浜松医科大学, 医学部, 助教 (20444359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 誠二 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50377743) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 免疫応答 / 蝸牛 / 前庭 / 難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は非症候群性遺伝性難聴家系(DFNA34)の連鎖解析を行い、本家系の難聴がNLRP3遺伝子変異により生じていることを明らかにした。現在までに、NLRP3は全身性自己炎症性疾患であるクリオピリン関連周期熱症候群(cryopyrin associated periodic syndrome: CAPS)の原因遺伝子であることが知られている。CAPS患者では、NLRP3の機能獲得型変異により自然免疫担当細胞から恒常的にInterleukin-1β(IL-1β)が分泌されるために全身性炎症が生じると考えられている。DFNA34患者では難聴以外に臨床症状が認められないため、機能獲得型変異により全身性炎症が生じ、その一部症状として蝸牛内炎症が生じたとは考えにくい。そこで我々は、蝸牛内に組織マクロファージが存在し、その細胞からIL-1βが分泌されたために蝸牛内炎症が惹起され非症候群性難聴が生じたという仮説を立てた。本研究では、この仮説を、マウスを用いて証明するとともに、蝸牛内炎症がヒトの難聴疾患と関連しているかについて検討することが目的である。 令和2年度までに、野生型マウスを用いて、マウス蝸牛においてNLRP3インフラマソームが活性化されること、NLRP3インフラマソームが活性化される細胞は組織マクロファージであることを明らかにした。一方、前庭において組織マクロファージが存在するか、NLRP3インフラマソームが活性化されるかについては検討されていなかったため、令和3年度はマウス前庭を用いてこれらの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度までに、野生型マウスを用いて、マウス蝸牛においてNLRP3インフラマソームが活性化されること、NLRP3インフラマソームが活性化される細胞は組織マクロファージであることを明らかにした。一方、前庭において組織マクロファージが存在するか、NLRP3インフラマソームが活性化されるかについては検討されていなかったため、令和3年度はマウス前庭を用いてこれらの検討を行った。 ① Cx3Cr1 GFP/+マウス前庭に組織マクロファージが存在する:単球やマクロファージの表面マーカーであるCx3cr1がGFPに置換されているトランスジェニックマウスCx3cr1 GFP/+マウスを用いて実験を行なった。マウス前庭を摘出して全組織標本を作成し、蛍光顕微鏡で観察した。前庭組織において緑色蛍光を発する細胞が存在しており、形態学的にもこれらの細胞は組織マクロファージと思われた。 ② 野生型マウス前庭ではNLRP3インフラマソームは活性化されない可能性がある:NLRP3 インフラマソームは、活性化されるとIL-1βの分泌を惹起することにより炎症反応を引き起こす。活性化するためには2段階のステップを誘導することが必要である。2段階のプテップを経てIL-1βが分泌される現象は、NLRP3インフラマソームに特異的であるため目的とする細胞内でNLRP3インフラマソームが活性化されるか評価するために応用されている。本研究では、野生型マウスより前庭組織を分離・培養し、最初のステップを誘導するためにリポ多糖(LPS)を加えて培養し、さらに次のステップを誘導するためにATPを加えて培養して、培養液中のIL-1βの濃度を測定した(LPS+ATP)。その結果、LPS+ATPを加えた群でも、IL-1βはほとんど検出されず、何も加えなかった群やLPSのみ加えた群と有意差はなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
蝸牛内炎症により難聴が生じるか、そして前庭においてNLRP3インフラマソームにより炎症が生じるか評価するため、DFNA34家系で同定された変異を用いて新たにNLRP3モデルマウスを作製する。ノックインマウスの作成は、CRISPR/Cas9法によるゲノム編集技術を用いて行う。オフターゲット作用により本来期待していない部位に変異が生じる可能性があるので、野生型マウスと数世代交配してオフターゲット変異を持たないマウスを選別する。作製したNLRP3ノックインマウスにおいて、体重、皮疹、生存期間を観察するとともに、全血球計算や血液中のサイトカイン濃度を測定する。また、聴覚機能についても評価する。それぞれについて、詳細を以下に記載する。 ① 体重、皮疹、生存期間の観察について:作製したNLRP3ノックインマウスにおける全身性炎症や成長障害を評価するために、体重、皮疹、生存期間を観察し、野生型マウスと比較する。なお、皮疹の評価は、視診および皮膚組織切片を観察して評価する。 ② 全血球計算や血液中のサイトカイン濃度の測定について:全身性炎症が惹起されているか、惹起されているとしたらどの程度の炎症がいつ頃から惹起されているのか評価するために、全血球計算や血液中のサイトカイン濃度を測定する。全血球計算では、赤血球数、白血球数、白血球分画、血小板数を自動血球計算装置により測定する。また血液中のサイトカインに関しては、IL-1β、IL-6、TNF-α濃度をELISA 法により測定する。 ③ 聴覚機能の評価について:聴力障害の有無について評価するために、マウスの聴力をABR およびDPOAEを用いて測定する。
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Causes of Carryover |
NLRP3ノックインマウス作製費用の支払いが、令和4年度以降になったため次年度使用額が生じた。令和4年度中に、NLRP3ノックインマウス作製費用として、次年度使用額を利用する予定である。
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Research Products
(8 results)