2022 Fiscal Year Research-status Report
気道乳頭腫における予後予測因子の探索:診療の効率化を目指して
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20K09739
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松崎 洋海 日本大学, 医学部, 准教授 (00451328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅居 僚平 日本大学, 医学部, 助教 (60851095)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | papilloma / human paillomavirus / recurrence |
Outline of Annual Research Achievements |
引き続き、咽頭・喉頭・気管といった気道に発生した乳頭腫の臨床データを集積している。呼吸器の新生物である気道頭腫症の診療の効率化が、本研究の最大の目的である。中でも再発性気道乳頭種においては、主に喉頭に病変が集中して発生するが、喉頭外への病変の播種が起こることが知られている。しかし、実際のところ再発性気道乳頭腫症における喉頭以外の好発部位などに関するデータはこれまで乏しかった。そこで、本研究で得られたデータと過去に当施設で得られていたデータとを照合して、再発性気道乳頭腫症の喉頭外病変の好発部位を明らかにし、国際雑誌に投稿し掲載された。内容は以下のように述べた。当科で診療を行った127名の気道乳頭腫患者(そのうち、41名が再発性気道乳頭腫、86名が非再発性咽頭乳頭腫)から得られた内視鏡画像データと手術記録データを用いて、病変の発症部位をICD-O分類を用いて詳細に抽出した。そして、再発性気道乳頭腫症患者群と非再発性乳頭腫症患者群とを統計学的に比較した。結果としては、41名の再発性気道乳頭腫症患者において、10名に喉頭以外にも病変を認めた。その10名のうち8名(再発性気道乳頭腫全体の19.5%)において上咽頭下壁に病変を最も多く認められた。一方、非再発性乳頭腫患者群においては、上咽頭下壁に発症した患者は1名のみ(非再発性乳頭腫群の1.1%)であった。これら両群を比較し、統計学的に有意に再発性気道乳頭腫において上咽頭下壁に病変が多く発生することが明らかになった。このことから、再発性気道乳頭腫患者を診療する際には、上咽頭下壁に特段の注意を払って診療することが求められることがわかった。今後の診療効率化に一定の貢献できる知見を得ることができた。今後もさらに、気道に発生した乳頭腫症例のデータを蓄積し、治療経過の予後を予測する因子を見出し、診療の効率化を目指して行きたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で得られたデータを用いて、気道乳頭腫の中で再発性の場合における喉頭以外の病変の好発部位を明らかにした。また、上咽頭下壁や軟口蓋は以前から乳頭腫の好発部位とされてきたが、非再発性の咽頭乳頭腫群と比較し、非再発性ではまれにしか発生しないことが本研究により明らかになった。このことは当初の目的である気道乳頭腫症の診療効率化に向けて、限られた時間や医療資源を有効に活用する上で重要な知見を得られたと考えられる。なお本研究結果は、European Archives of Oto-Rhino-Laryngology誌に掲載された。このことから、研究は概ね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も研究データの取得を活動の中心とする。対象とする気道乳頭腫の患者の基本的データとHPV感染状態の変化、術間間隔、および疾患重症度スコア(Derkayの部位スコア)を定期的に蓄積してきている。定期的な観察の中で、蓄積された各種パラメーターと、臨床経過との関連性について検討する。その中で予後予測因子がもしも同定できれば、予後良好と判断される患者さんへ の、過剰な検査を減らすことも可能になると推測する。そうした観点で、診療の効率化を目指して行きたい。
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Causes of Carryover |
当該年度においては、主に患者から採取した検体中のHPV-DNA検査を中心に支出し、加えて、研究成果の報告と最新の知見・情報の収集のため、国内学会に参加することなどの旅費に支出した。当初は、研究用に内視鏡機器を購入を予定していたが、予定していた機器値段の物価上昇に伴い、購入費用の捻出が困難であった。当該年度では、当施設の外来に設置されている内視鏡機器を代用し、研究を遂行した。次年度に安価な中古品が在庫に出れば、購入を検討する。一方、これまで当施設で使用していた研究データの蓄積に用いていたコンピューターがこの年度末に故障し、記録媒体も含めて新規購入が必要になった。次年度においては、これらのデータの蓄積・解析・管理に用いるコンピューターとその周辺機器と、必要なソフトウエアの購入に充てる予定である。
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