2021 Fiscal Year Research-status Report
嗅神経上皮の傷害・再生過程における起炎性・抗炎症性メディエーターの関与の解析
Project/Area Number |
20K09749
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 健二 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40334370)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊田 周 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00555865)
有田 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (80292952)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 嗅神経上皮 / 再生 / 炎症性メディエーター / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. FAT1マウスのサンプル採取:体内のオメガ3脂肪酸濃度が高く維持されている遺伝子改変マウスであるFAT1マウス、および対照群の野生型マウスより遺伝子発現の網羅的解析、脂肪酸解析のためのサンプルを採取した。2-3か月齢の時点で深麻酔し嗅粘膜、嗅球を摘出し、一部検体はRNAの抽出、残りは脂肪酸解析用に凍結保存した。また同じく2-3か月齢の時点で嗅粘膜毒性物質であるメチマゾールを腹腔内投与し、投与後14日の神経再生期に同じく嗅粘膜と嗅球を摘出してRNAの抽出と脂肪酸解析用の凍結保存を行った。 2. 嗅粘膜の傷害後再生期における遺伝子発現の網羅的解析:上記1.のFAT1マウスおよび野生型マウスの嗅粘膜から抽出したRNAを用い次世代シークエンサーを用いて遺伝子の網羅的解析を行った。野生型に比べFAT1マウスが有意に高かった遺伝子は141、低かった遺伝子は311であった。有意に発現が高い遺伝子には嗅覚受容体が多数含まれており、FAT1マウスでは野生型に比べ嗅粘膜傷害後の神経再生プロセスが促進されている可能性が示唆された。 3. 飼料の脂肪酸組成が嗅粘膜の細胞動態に与える影響の解析:野生型C57BL6マウスを2群に分け、1群は主としてオメガ3脂肪酸を多く含むアマニ油添加飼料、もう1群はオメガ6脂肪酸を多く含むサフラワー油添加飼料で飼育した。飼育開始3か月後にメチマゾール投与により嗅粘膜傷害を惹起し、投与後14日で組織を固定し嗅粘膜組織切片を作成した。現在両群の嗅粘膜細胞動態を解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である、嗅粘膜の恒常性維持における脂質メディエーターの関与の解析を脂質関連遺伝子改変マウスであるFAT1マウスの解析と食餌介入の両面で進めている。遺伝子の網羅的解析ではFAT1マウスにおいて神経再生プロセスが促進されている可能性が示唆された。またアマニ油とサフラワー油添加の飼料による介入実験は傷害モデルの組織採取が終了し解析中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
FAT1マウスの解析ではすでに採取し保存してある嗅粘膜、嗅球組織を用いて脂質の網羅的解析を行う予定である。またオメガ3脂肪酸の神経再生プロセス促進作用については今後その分子メカニズムについて細胞増殖因子、神経分化因子の解析を進める予定である。またアマニ油とサフラワー油添加の飼料による介入実験では、組織学的な群間差が認められた場合は両群の嗅粘膜、嗅球の脂質解析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
一部の実験の遅れのため試薬購入費用に計上している予算が次年度使用となった。
|