2020 Fiscal Year Research-status Report
骨芽細胞が産生する新規SLRPを介した脂肪細胞分化・脂質代謝の制御機構の解明
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20K09875
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 正人 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (30236757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 潔美 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (90399973)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オステオアドへリン / 骨芽細胞 / 脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,骨芽細胞が産生するsmall leucine rich proteoglycan (SLRP)の一つであるosteoadherin (Osad)に注目し,骨と脂肪組織の異種組織間の恒常性維持のための機能的なクロストークを解明することを目的とする。その詳細な分子機構を調べ,このSLRP分子が骨から脂肪組織へのシグナル分子として脂肪細胞分化や脂質代謝に及ぼす作用とその関係を明らかにする。本研究により,個体レベルにおいてこれまで明らかではなかった骨と脂質代謝との関連性の解明を目指す。今年度は,本研究で用いるための組換えOsadの作成を行った。293細胞にOsad発現プラスミドをリポフェクタミンを用いてトランスフェクトした。この細胞の培養上清を回収し濃縮・部分精製を行い組換えOsadフラクションを得た。組換えOsadを3T3-L1細胞に加えて培養し,Oil RedO染色により脂肪細胞分化の評価を行った。このとき,同時にsclerostinを加えた場合,またコントロールとしてbiglycan, decorinなど他のSLRPについても検討を行った。この培養系で全RNA,タンパクを採取し,白色脂肪細胞分化,脂肪酸の取り込み・輸送・酸化など脂質代謝に関わる分子の発現を調べたところ,これらの発現量の変化が観察された。すなわちOsadが脂肪組織の脂肪細胞分化のみならず,脂肪酸合成やコレステロール代謝といった生体にとって重要な脂質代謝系に対しても影響を及ぼしえることが明らかとなった。本年度得られた結果から,SLRPが脂肪組織における脂質代謝に影響を及ぼしていることが示唆されるという新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画に基づき研究を実施し,以下の研究成果を得たため。 293細胞にOsad発現プラスミドをリポフェクタミンを用いてトランスフェクトし,この細胞の培養上清を回収し濃縮・部分精製を行い組換えOsadを得ることができた。この組換えOsadを3T3-L1細胞に加えて培養し,全RNAを採取した。PPAR,C/EBP, LPL (1ipoprotein 1ipase),FAT (fatty acid transporter),ACS (acy1-CoA synthetase),UCP (uncoup1ing protein)などの発現をリアルタイムPCRを用いて調べたところ,発現量の変動が明らかとなった。このことは, Osadが脂肪組織の脂肪細胞分化のみならず,脂質代謝系に対しても影響を及ぼしえることを示しており,その意義は大きい。また,このOsadを過剰産生させた骨芽細胞を作成したところsclerostin産生が増加することを見出した。すなわち脂質代謝に影響を及ぼすsclerostin産生がプロテオグリカンがその調節因子となっているという新たな可能性が考えられた。以上より,本研究はおおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
Osadはケラタン硫酸鎖2本を有する小型プロテオグリカンである。Osad分子にはロイシンリッチリピートドメイン,硫酸化チロシンドメインなど複数のドメイン構造が明らかになっている。そこで,今後はこのOsadとLRP, sclerostinの細胞内における分子間相互作用を調べる。それぞれのcDNAをFLAG, mycタグを付加するためのベクターに挿入し,細胞にトランスフェクトする。細胞抽出物をタグに対する抗体で免疫沈降したのち,他方のタグ抗体でウエスタンブロットを行う。Osadの種々の変異体を作成して,それぞれの分子の相互作用部位を同定することを検討している。これによって,Osadの相互作用ドメインおよび脂質代謝を調節しうる機能ドメインを同定する。これら部位が判明すれば,その合成ペプチドを作成し脂肪細胞分化を制御しうるかについても検討していく。
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Causes of Carryover |
Covid19による行動指針(BCP)レベルにより研究計画が一部変更したため,および試薬類が想定よりも安価で購入できたため。
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