2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌微小環境における間葉系幹細胞を司令塔とした癌浸潤・転移誘導メカニズムの解明
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20K09883
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 太朗 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00317570)
加茂 政晴 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (40214564)
横田 聖司 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (50802401)
帖佐 直幸 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (80326694)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 口腔癌細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞はケモカインを分泌することにより、その増殖や浸潤・転移の能力を向上させる働きを有する間葉系幹細胞(MSC)を癌細胞周囲の微小環境にホーミングさせることが知られている。ホーミング後のMSCは、1) 癌間質線維芽細胞 (CAF)に分化して血管内皮細胞増殖因子の分泌により血管新生を促進し、さらなるMSCや炎症性細胞のホーミングを誘導すること、2) MSCから分化したCAFから分泌されるサイトカインにより、癌細胞の上皮間葉転換を誘導してその浸潤・転移能力を向上させること、3) MSCから分泌されるサイトカインの働きにより、M2マクロファージへの極性化や、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)の形成が誘導され、このTAMの働きにより宿主の癌細胞に対する免疫反応が抑制されること、4)MSCから放出されるエクソソーム中のmiRNA等を介して癌細胞の増殖や浸潤・転移を促進することが知られている。このように、癌微小環境の司令塔としてのMSCが周囲の細胞に働きかけて、癌細胞の浸潤能や転移能を亢進する分子メカニズムについてはいくつかの報告がなされているが、その前段階として、癌細胞がMSCにどのように働きかけてMSCを癌細胞に有利な「浸潤・転移誘導型MSC」となるように教育をするのかについては細胞・分子レベルで不明である。 本研究では、口腔癌細胞が癌微小環境中のMSCをどのような分子メカニズムで「浸潤・転移誘導型MSC」あるいは「浸潤・転移抑制型MSC」に変化させるのかについて、癌微小環境を構成する血管構成細胞、CAFあるいは免疫担当細胞との相互ネットワーク環境下で明らかとすることを目的とする。本研究により、これまでに報告のない浸潤・転移誘導型MSCを中心とした口腔癌微小環境ネットワークの全容を分子レベルで明らかとし、革新的な口腔癌の浸潤・転移阻害療法樹立のための分子ターゲットを特定したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-3細胞をヌードマウス皮下に移植した後に所属リンパ節に転移した癌細胞を採取し、これを再び移植するということを繰り返して得られた高浸潤・転移型ヒト口腔扁平上皮癌細胞株LMF-4(Momose et al., J. Oral Pathol. Med., 7: 391-395, 1989)がMSCを癌浸潤・転移誘導型MSCに変化させる際の分子メカニズムを解明するための第一段階として、HSC-3細胞とLMF-4細胞で発現頻度の異なる遺伝子を捉えるための研究を実施した。その結果、HSC-3細胞と比較してLMF-4細胞でその発現が異なるシグナル伝達分子を複数明らかとすることに成功した。今後、これらの発現頻度差を認めたシグナル伝達分子の中から、口腔癌浸潤・転移誘導型MSCへの性質転換に働くものを絞り込む作業を開始する。このように、本課題研究の目的である口腔癌細胞が癌微小環境中のMSCをどのような分子メカニズムで「浸潤・転移誘導型MSC」あるいは「浸潤・転移抑制型MSC」に変化させるのかについて明らかとするための研究基盤は樹立されている。
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Strategy for Future Research Activity |
①初年度に捉えた口腔扁平上皮癌細胞由来のモデル分子のうちで、MSCを血管構成細胞(血管内皮細胞や血管周皮細胞)へと分化誘導し、また、その後の血管新生を促進するためにキーとなる分子をin vitroレベルで絞り込む。初年度と同様に、ピックアップしたモデルキー分子のmiRNAを用意する。各miRNAを低浸潤・転移型のHSC-3細胞に導入した後にMSCと共培養して、MSCの血管構成細胞への分化能力と血管構造構築能力が変化するかについてRT-qPCR法とI型コラーゲン三次元培養法などを用いて明らかとする。 ②初年度に捉えた口腔扁平上皮癌細胞由来のモデル分子のうちで、MSCを介したM2-マクロファージ分極化誘導を促進するためにキーとなる分子をin vitroレベルで絞り込む。①と同様に、ピックアップしたモデルキー分子のmiRNAを用意する。各miRNAをを低浸潤・転移型のHSC-3細胞に導入した後にMSCと共培養する。共培養後のMSCをMACS磁気細胞分離装置により分離し、このMSCと研究代表者が独自に樹立した骨髄由来マクロファージ前駆細胞(M0-マクロファージ)培養法により得るM0-マクロファージとの共培養により、マクロファージM2分極化が増強されるかどうかを明らかとする。
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Causes of Carryover |
2020年度中に実施できなかった遺伝子発現調査実験計画の一部について、次年度中に実施することを予定しているため。
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Research Products
(2 results)