2020 Fiscal Year Research-status Report
投射ニューロンにおける新たな疼痛マーカーの発見とその分子制御による鎮痛法の確立
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20K09896
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
林 良憲 日本大学, 歯学部, 准教授 (80582717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 教授 (20362238)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 特任教授 (60160115)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インターロイキン-33 / 神経障害性疼痛 / アロディニア / 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / オリゴデンドロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
痛みは生体の危険回避に不可欠な感覚であり警告系のシグナルとして働く一方で,痛みの原因が除去された後も慢性的に持続する痛みが存在する。三叉神経痛などの神経障害性疼痛は非常に深刻な問題を有しており,基本的日常生活動作である食事に支障をきたしQOLを著しく脅かすことが問題視されている。 多くの研究から,感覚情報の統合を行う三叉神経脊髄路核尾側亜核において神経の感作が生じていることが分かっていたが,その詳細は不明であった。本研究における当初の計画では,上位中枢へと疼痛シグナルを伝達する投射ニューロンにサイトカインの一種であるインターロイキン (IL)-33が発現しているという想定であったが,実験過程において,IL-33が三叉神経脊髄路核尾側亜核のオリゴデンドロサイトにより強く発現していることが見えてきた。また,神経障害性疼痛モデルである下歯槽神経の部分結紮によりIL-33陽性細胞数が増加することが分かった。そこで,三叉神経脊髄路核尾側亜核内でIL-33がどのようにして痛みに関与しているか検討した。神経障害性疼痛モデルで生じる口髭部でのアロディニアはIL-33阻害薬の大槽内投与により改善が認められ,一方で正常な動物へのIL-33の大槽内投与により口髭部にアロディニアが生じた。免疫組織化学染色によりIL-33受容体が神経に特異的に発現することが分かったため, IL-33が神経を直接感作させている可能性が考えられる。そこで,神経の感作に重要な要因であるNMDA受容体サブユニットのNR2Bに焦点を当てた。IL-33誘発性のアロディニアはNR2B含有NMDA受容体の特異的阻害薬であるRo 25-6981により有意な改善が認められた。以上のことから,三叉神経脊髄路核尾側亜核で生じるIL-33シグナルはNR2Bの活性化を引き起こすことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,上位中枢へと疼痛シグナルを伝達する投射ニューロンにサイトカインの一種であるインターロイキン (IL)-33が発現しているという想定であったが,実験過程において,IL-33がオリゴデンドロサイトに強く発現していることが見えてきた。そこで,オリゴデンドロサイトにおけるIL-33の神経障害性疼痛に対する役割を検討することとした。これまでの検討により,オリゴデンドロサイトで合成されたIL-33が神経のNR2Bを活性化することが分かってきている。若干標的が変わったものの,おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の課題として,IL-33がどのようにしてNR2Bの活性化を引き起すのかという点である。NR2Bの活性化様式として受容体のリン酸化が良く知られていることから,リン酸化を引き起こすシグナルに着目することで,IL33受容体以降の下流シグナルを同定する予定である。これには主に生化学的手法を用いた解析を行う。 IL-33の大槽内投与により三叉神経脊髄路核尾側亜核におけるNR2Bの活性化が生じた可能性は行動学的に捉えているが,機能的なNR2Bの活性化が生じているか否かに関する直接的な証拠が得られていない。そこで,パッチクランプ法を用いて,NR2Bを介した電流を計測することにより,IL-33による機能的なNR2Bの活性化を捉えることを計画している。
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Causes of Carryover |
得られた実験結果に応じて抗体を購入することを計画していたが,期間内に目的とするデータを取ることができなかったため,次年度使用額が生じた。 これは,次年度に抗体購入費として使用する計画である。
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Research Products
(13 results)