2020 Fiscal Year Research-status Report
RNAメチル化修飾を用いた口腔扁平上皮癌の早期診断法の確立
Project/Area Number |
20K10149
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
矢田 直美 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (60468022)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口腔癌 / RNAメチル化 / 細胞診 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】近年の研究では、RNAもDNAと同じような化学修飾を受け、RNAのメチル化がmRNAの安定性などの重要な機能を持つといわれている。本研究は、早期および進行した口腔扁平上皮癌におけるRNAメチル化修飾の実態を口腔潜在的悪性疾患(白板症や口腔扁平苔癬など)と比較し、①優位なRNAメチル化修飾因子を同定し、②RNAメチル化修飾の診断学的な有用性や予後因子になるかなどの臨床学的な意義の解明、③これを口腔擦過細胞診へ応用し、早期発見へ発展させること目的とする。 【対象と方法】mRNAメチル化のN6-メチルアデノシン(N6-methyladenosine: m6A)について、白板症5例、口腔扁平苔癬8例、扁平上皮癌8例を対象とし、m6Aについて、パラフィン切片上で免疫染色を行った。次にパラフィン切片よりtotal RNAを抽出し、cDNAへ変換し、m6Aは書き込み因子のメチルトランスフェラーゼ複合体のMETTL3 (methyltransferase-like 3)、METTL14(methyltransferase-like 14)、消去因子のFTO (fat mass and obesity protein)やALKBH5 (alkB homolog 5)について、real-time PCR法により発現を定量した。 【結果】m6A免疫染色では、白板症、口腔扁平苔癬、扁平上皮癌いずれも核陽性像が見られ、扁平上皮癌は、浸潤した腫瘍細胞の細胞質への陽性が認められた。Real-time PCR法の発現解析では、白板症5例中3例、口腔扁平苔癬8例中4例、扁平上皮癌は8例中6例、total RNA抽出からcDNAへと変換し、METTL3 、METTL14、FTO 、ALKBH5 のPCRの発現解析を行った。METTL3の発現が、扁平上皮癌症例が白板症、口腔扁平苔癬よりも有意に上昇していた。他の因子については、発現の有意差は見られなかった。 【結論と考察】m6Aの免疫染色では、扁平上皮癌では核内では、細胞質への発現が見られ、書き込み因子METTL3が有意に発現をしていた。扁平上皮癌では、METTL3の変化が重要であるのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
口腔癌症例について、パラフィンブロックからのtotal RNA量はmRNAを測定することが比較的容易にできるが、比較を行っている口腔潜在的悪性疾患(白板症、口腔扁平苔癬)のパラフィンブロックからの適量の抽出ができない症例が多い。症例数が不足しており、比較検討ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
症例数が不足しているため、解析件数を増やす。RNA抽出精度をあげる。また、扁平上皮癌はm6Aの細胞質の発現が見られ、書き込み因子、消去因子の解析のみなので、m6Aの細胞質の発現が見られと書き込み因子METTL3因子の発現が高いため、読み取り因子のRNA結合 YTHのドメインを有するYTHDF1~3についても検索を行い、細胞診検体について現在並行して実験をおこなっているので、その結果との比較検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染の影響で出席する学会がオンラインとなり,旅費が発生しなかったため。翌年度は学会の出席および新規抗体試薬が必要なため使用する予定である。
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