• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Research-status Report

Constructing a medical humanity curriculum for professional identity formation of medical students

Research Project

Project/Area Number 20K10324
Research InstitutionUniversity of Miyazaki

Principal Investigator

横山 彰三  宮崎大学, 医学部, 教授 (60347052)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 南部 みゆき  宮崎大学, 医学部, 准教授 (90550418)
本部 エミ  宮崎大学, 多言語多文化教育研究センター, 講師 (10755515)
Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords医療人文学 / 苦海浄土 / 仏教 / 東洋思想 / 癒し
Outline of Annual Research Achievements

医療人文学入門のテキストとして、『苦海浄土』(石牟礼道子)を挙げている。これは仏教世界の「浄土」をそのタイトルに冠する。石牟礼に限らず水俣病事件を闘った人たちの言葉の中には、その核心部分に仏教、特に親鸞の概念が登場する。
彼ら彼女らは、その壮絶な苦しみの先に、なぜ浄土門の教えを希求したのか。政治学者の中島岳志は、親鸞の教行信証にみられる海のメタファーを引いて、苦海浄土との対比を試みている。一方で、石牟礼は既成の宗教に失望していた。にもかかわらず、なぜ浄土を希求せざるを得なかったのか。石牟礼の生命の思想は、ただ人間のみならず広く森羅万象に存在する生類を含む人間を志向している。
石牟礼は「現世は苦海である」という。石牟礼の希求した浄土とはなんであったのか。また、水俣病患者で漁師であった緒方正人は著書『チッソは私であった』のなかで、水俣病闘争から離れていった過程で気づいた、生類、いのちのつながりあう世界への回帰を希求している。これはほかでもない石牟礼のいう「もうひとつのこの世」ではないだろうか。
このテーマを解読するためには、日本における仏教のありよう、特に仏教を通した私たち日本人の世界観を繙く必要がある。この目的のため、本年度は仏教関連の調査を実施した。具体的には東京国際仏教塾における仏教理論と実践の調査が含まれる。
同時に、現代医学や医療の行き詰まりから、欧米においても代替療法や近代物理学を越えた癒しの技術が注目されている。この点について、特に「氣」の概念とそれを根本概念に据えた治療法についても調査を行い、その治癒の世界観や東洋思想について癒しとの関連を調べた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

言うまでもなくコロナ関連の制約により、当初予定していた海外調査等は中止し、国内での調査や医療人文学講義の実施から得たフィードバックを元にした調査へと舵を切った。特に講義で使用するテキスト『苦海浄土』は医学生には是非とも読んで欲しい作品である。
浄土という仏教概念からともすると仏教に偏ったふうにとられることもあるが、石牟礼自体は「すべては命である」という思いである。現在の医学教育が物質還元主義一辺倒に走り、社会正義や社会的弱者への眼差しを忘れている今であるからこそ、かえってじっくりと物語を読み解き、「いのち」に思いをはせる時間が得られたことは、むしろ僥倖であったかもしれない。

Strategy for Future Research Activity

研究機関を1年延長したので、最終年度は発表などに注力したい。医療人文学入門ではコミュニケーションの手法としてNVC(非暴力的コミュニケーション)を扱う。この中では人間にとって普遍的に大切なニーズを繙く。この視点から文学作品を読み解くことで、いっそうの人間理解が進むものと思われる。また、西欧のキリスト教は人間を頂点としたピラミッド型の世界観であり、自然は共存するものというよりは征服しコントロールすべき対象である。現在の西洋医学はこの世界観の行き着く果てであり、本来人間のもつ自然の中で共存していく医療観とはほど遠い。東洋的世界観やネイティブアメリカンなどの自然観についてさらに調査して、現それに代医療のひずみを対比させ浮き彫りにしたい。

Causes of Carryover

コロナにより海外調査の実施が全く出来なくなったため、国内調査等への振り替えを行いつつ、文学作品の読み解きとその背景にある世界観へと調査内容を変更したため。

URL: 

Published: 2023-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi