2020 Fiscal Year Research-status Report
「治療であるという誤解」に応答するインフォームド・コンセントの質を高める研究
Project/Area Number |
20K10339
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
石川 洋子 旭川医科大学, 医学部, 特任准教授 (30550660)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん臨床試験 / インフォームドコンセント / 治療であるという誤解 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、がん臨床試験におけるインフォームド・コンセントのサポート体制の構築という観点から、がん患者である被験者の「治療であるという誤解」に応えるべく正面から向き合い、医療者である研究者の倫理的なあり方を探求することである。 今年度は研究の第1段階として、がん臨床試験に携わった経験を持つ医療者のインフォームド・コンセントを得る過程での経験の可視化を試みるために、インタビューによる内容分析を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症にかかる研究活動の制限により、インタビュー実施が困難となったため、研究計画の第2段階である、治療であるという誤解」に焦点化した文献レビューを行った。 データーベースはPubMedと医学中央雑誌を用い、検索式は[therapeutic misconception]and [informed consent]and[oncology]、日本語では[治療]and[誤解]and[インフォームドコンセント]and[臨床試験]で行った。その結果、研究参加者を対象とした研究内容に関する理解度や合意レベルを評価する研究が多く、医療者を対象に実態調査を行った研究は僅かであることが明らかとなった。一方、インフォームド・コンセントをコミュニケーションのプロセスと捉え、研究者である医師と研究参加候補者との会話を録音したデータの内容分析や文献レビュー、また、研究参加者の研究参加理由についての評価に関する研究が進められていた。研究参加者が研究参加を決める重要な要因は、個人的な利益に関する認識であり、医療者の意思決定支援においては、対話にかける時間との関連性が挙げられた。研究参加者が研究目的を誤解したり、通常医療と研究を混同することは、研究者と研究参加者それぞれの適切な役割が果たせなくなる危険性を孕むことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症にかかる研究活動の制限により、対面によるインタビュー実施の可否、並びに研究計画の見直しについての判断が遅れたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は文献レビューの結果と、今年度に行う予定であったがん臨床試験に携わった経験を持つ医療者を対象に、臨床試験のインフォームド・コンセントを得る過程での経験を記述し、内容分析を行い、遅れを取り戻す。次に文献レビュー結果と統合し、がん臨床試験において生じる倫理的課題を明確にする。 上記成果について研究発表により医療倫理研究者、研究倫理研究者からなるPeerレビューを組み入れ洗練させる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に伴う研究実施の制限により、インタビュー実施に伴う交通費、研究成果発表のための旅費を使用できなかった。そのため、がん臨床試験や研究倫理におけるインフォームド・コンセントに関する書籍購入に一部支出したものの、次年度使用額が生じた。繰越した使用額はインタビュー実施、研究発表のための費用として使用することを計画している。
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