2022 Fiscal Year Research-status Report
「治療であるという誤解」に応答するインフォームド・コンセントの質を高める研究
Project/Area Number |
20K10339
|
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
石川 洋子 旭川医科大学, 医学部, 客員准教授 (30550660)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 治療であるという誤解 / インフォームド・コンセント / 治療者と研究者の役割 / 被験者の心理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は被験者が抱く「治療であるという誤解」について、それが生じる可能性を最小限にすること及び、臨床研究における最善のインフォームド・コンセントのあり方を提案することを目的としている。本研究はこれまで、「治療であるという誤解」は被験者のインフォームド・コンセントにおいて何が問題となるのか、について検討した。治療とは当然ながら患者当人の利益である疾病の治癒や症状の緩和であるが、研究は患者(被験者)個人ではなく科学的知見の獲得を目指している。被験者が治療と研究を区別せず、研究参加を継続することで被験者は研究では原則的に期待できない治療効果に対するニーズを持つ。また医療者はこのような被験者の期待に対して適切に応答しないことは、研究者としても医療者としてもその義務と責任を果たしていない。 「治療であるという誤解」に関しては、研究者が被験者数を獲得したいために無意識に「治療であるという誤解」を誘発しやすい言動や態度をとっている可能性がある。研究者が研究者と治療者との役割の違いを自覚した上で、どこまでが治療でどこからが研究なのかについて確実に被験者に説明と理解を得る必要である。そしてこのような取り組みについて本邦ではどこまで行われているのかについては調査・報告がなく、明らかでない。 本研究は臨床試験のうち、がん臨床試験における治療であるという誤解に焦点を当てている。その理由はがんという疾患の特徴から患者の治療への期待が高いこと、そしてこのことは治療であるという誤解がある程度は避けられないことを意味するからである。がん臨床試験医参加する被験者は治療であるという誤解を抱いて当然の状況にある。このような被験者の心理を汲み取り、適切なインフォームド・コンセント取得に加え、研究参加時の心理的サポート体制を検討する必要性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究者の離職により2022年度に予定していた研究者への調査が断念された。研究者への調査を行わず本研究の成果をまとめることを検討したが、Appelbaumらの研究以来、「治療であるという誤解」についてその現象の認知はある程度進んだが、予防策の実施状況等については現状明らかでない。そのため臨床試験に携わった経験を持つ医療者を対象とした、臨床試験におけるインフォームド・コンセントを得る過程での経験や困難について調査が必要と判断し、研究期間の延長により調査を実施、本研究の成果を統合する。
|
Strategy for Future Research Activity |
がんの臨床試験に携わった医療者を対象に、被験者からインフォームド・コンセントを取得する際の経験について調査を行う。調査内容は、研究の目的や方法などの説明において1)被験者の理解をどのように確認しているか、2)治療との誤解が生じないための説明や環境への配慮や工夫の実施、3)治療との誤解が生じていると感じた際の対応、また、研究実施中、研究者としての役割と医療者としての役割へのジレンマの経験についてを予定している。 上記の調査と次年度までの文献レビュー、被験者としてのがん患者の心理状況についての倫理的検討を踏まえ、研究成果をまとめる。
|
Causes of Carryover |
研究者の離職により研究活動が実施できなかったことによる。 今年度は研究職へ復職したため、がん臨床試験に携わった医療者への調査を行う。研究費は調査のための諸費用、国内学会での研究成果の発表を行うための旅費に充てる。また今年度までの研究成果について統合した研究成果論文の翻訳費用に充当する予定である。
|