2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K10341
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中澤 栄輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90554428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立花 幸司 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (30707336)
植原 亮 関西大学, 総合情報学部, 教授 (40534368)
山本 圭一郎 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 臨床研究センター, 室長 (50633591)
伊吹 友秀 東京理科大学, 理工学部教養, 准教授 (70713014)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳神経倫理 / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は「情動に物理的なしかたで介入する技術が社会にもたらす倫理的問題は何か」というリサーチクエスチョンを置き、(1)リスク評価、(2)ベネフィット評価、(3)自律性と人格、(4)社会的正義という生命医療倫理学的な観点から論点整理を行うと共に、先の問いにどう取り組むべきなのかについて一定の方向性を示し、論文として取りまとめをおこなうことである。 情動に物理的なしかたで介入する技術は現在、急速に進歩を遂げている。情動は人間の心の機能に大きく寄与すると考えられるので、当該技術の急速な進歩は我々の人間性および社会性に大きなインパクトをもたらす。しかしその一方で、倫理的検討は国際的にもまだ医科学技術の進歩に追いついていないのが現状である。本研究課題の成果を研究論文としてまとめ上げることで神経倫理学研究の発展に国際的にも寄与できると考えられる。 2020年度は「情動に物理的なしかたで介入する技術が社会にもたらす倫理的問題は何か」について、基本的資料を作成するべく調査研究を実施した。調査は文献調査に加えて、fMRI、TMS、tDCS等を使用して情動に介入する研究を実施している研究者への聞き取り調査を行なった。 文献調査から、情動に物理的なしかたで介入するニューロモデュレーション技術が社会にもたらす倫理的問題として、(1)リスク評価における不可逆性の問題、(2)ベネフィットの測定の困難さが指摘されていることがわかった。 さらに、2020年度、本研究課題では、fMRI、TMSを用いて情動に介入する実験を実施している研究者との研究打ち合わせを実施することで上記(1)および(2)について詳細な検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「情動に物理的なしかたで介入する技術が社会にもたらす倫理的問題は何か」というリサーチクエスチョンに対する調査研究は順調に進行している。 ただし2020年度はコロナウイルス感染症の拡大による研究活動の制限が大きく研究環境を悪化させてしまった。 その環境悪化を文献研究およびインタビュー方式を工夫するなどして補ったが、計画していた ニューロモデュレーション技術が「自律性と人格」や「社会的正義」という観点から有するインパクトについてはまだ不十分である。 このニューロモデュレーション技術が「自律性と人格」や「社会的正義」という観点から有するインパクトにという論点は、参照するべき文献も多くないことがわかっているので、さらに幅をひろげた調査が必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
ニューロモデュレーション技術が「自律性と人格」や「社会的正義」という観点から有するインパクトについて、薬理学的な増強(エンハンスメント)の倫理を扱っている文献などを幅広に参照することで、理論的考察を深めたい。 2021年度は2020年度の研究成果を踏まえて調査の取りまとめを行い、倫理的問題の系統的な整理を実施する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、とりわけ、旅費の支出が困難であった。必要な情報収集は文献研究で補った。2021年度は状況の改善が見込めるため、当初の予定どおり、調査研究を実施する予定である。
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