2020 Fiscal Year Research-status Report
ワクチン獲得免疫が麻疹伝播に及ぼす免疫学的およびウイルス学的影響に関する研究
Project/Area Number |
20K10464
|
Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
倉田 貴子 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 企画部, 主任研究員 (70435890)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上林 大起 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (50622560)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 麻疹 / ワクチン / vaccine failure / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に日本から「土着の麻疹」は排除されたが、その後も輸入麻疹を契機とする麻疹アウトブレイクが発生し問題となっている。疫学調査からは必ずしもワクチンで麻疹を予防できないことがわかってきた。ワクチン接種歴のある麻疹患者は、排泄ウイルスゲノム量が比較的少ない傾向が報告されており、発症と伝播リスクは明確にされていない。 本年度はこれまでに当所で検出された麻疹患者(n=60)の血清中のウイルス特異的抗体価、患者の臨床検体(咽頭拭い液、血液、尿)中のウイルス核酸量を測定し、疫学情報と合わせて解析を行った。 患者血清中の麻疹特異的抗体の結合力(avidity)を指標に、麻疹抗原と強い結合力の抗体(avidity > 60%)を有する患者を修飾麻疹患者(n=38)、弱い結合力(avidity =< 60%) の抗体を持つ患者および抗体陰性の患者を初感染患者(n=22)と分類し、臨床検体中のウイルスゲノム量を比較した。 両群はいずれも発症後3日(中央値、範囲0 - 9日)で採取されており、ワクチン接種歴のある患者は修飾麻疹群で有意に多かった(p=0.01 Fisher’s exact test )。血液、咽頭拭いおよび尿中のウイルスの検出率に有意差はなかったが、いずれの検体種別においても初感染群において有意に多いウイルス核酸が検出された(血漿および末梢血単核球(PBMC): p<0.001, 咽頭拭い:p<0.05, 尿:p<0.05 Mann-Whitney U test)。しかし、ウイルスの分離率の比較では、咽頭拭いおよび血液では2群間に有意な差が見られたものの、尿での分離率に有意差は見られなかった。従って、修飾麻疹と初感染麻疹の感染性およびウイルスゲノム量の比較には血液と咽頭拭いが特に重要であるが、検体種別によってはゲノム排泄量と感染性粒子の量に乖離があると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者検体における麻疹ゲノム量の確定とウイルス分離については、概ね終了しており、今後免疫学的な検討を実施できる状況にあるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
初感染および修飾麻疹患者血清中のサイトカインの測定を行い、両群の細胞性免疫および液性免疫誘導に関連する因子の違いを検出する。また、臨床検体および分離株を用いた全ゲノム解析を行い、現在流行中の麻疹ウイルスゲノムの多様性およびそれらがウイルス増殖や宿主免疫に与える影響を検討する。
|
Causes of Carryover |
前年度予算はほぼ適正に執行できたが、予定金額と実際の購入金額の差により残余が生じた。これらの予算は次年度に繰り越し、消耗品費として使用する。
|