2021 Fiscal Year Research-status Report
インフラマソームを指標とするアセトアミノフェン中毒死の診断法確立
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20K10561
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
高安 達典 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (80154912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アセトアミノフェン / 急性肝障害 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
8週齢の雄マウスにアセトアミノフェンを腹腔内投与した.アセトアミノフェンの投与用量については,150, 300, 450, 600, 750 mg/kgを腹腔内投与して肝障害を惹起させた.対照群マウスには生理食塩水を腹腔内投与した.各用量における肝障害の程度を,生存率及び生化学検査によって比較,検討したところ,アセトアミノフェン600 mg/kgを投与した群で生存率が約50%であった. ①生存率:各アセトアミノフェン投与用量において,投与後の経時的な生存率を算出し,カプランマイヤー法によって統計的解析を行なった. ②血清肝逸脱酵素の測定:アセトアミノフェン投与後,経時的(2, 6, 10, 24, 48時間)に各マウスから血液を採取し,血清肝逸脱酵素(ALT及びAST)の測定を行い,肝障害の程度を生化学的に検討した. ③病理組織学的検討:経時的に採取した肝臓組織を,10%緩衝ホルマリン溶液で固定後,パラフィン包埋切片を作製した.各切片についてHE染色を行い,形態学的変化を観察した.形態学的肝障害の程度については,すでに報告されている方法に基づいてスコア化し(Eur J Immunol. 2006 Apr;36(4):1028-38.),統計学的解析を行った.アセトアミノフェン投与後6および24時間で,コントロール群と比べて有意に肝障害が惹起されていた. ④免疫組織化学的検討:好中球,マクロファージ(クッパー細胞),T細胞,NK細胞に対する特異的抗体を用いて,免疫組織化学的に肝臓への白血球浸潤の程度を検討したところ,コントロール群と比べて,アセトアミノフェン投与後の肝臓内には多数の白血球が浸潤していることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,動物実験による基礎的研究と,剖検試料を用いた実務的研究の二つを同時進行させることにより,法医診断学において指標となり得る分子を効果的かつ効率的に検索する.薬物中毒と診断された剖検例の試料についてはすでに収集を開始している.したがって,本研究は概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
1.マウスインフラマソーム情報伝達系の態様検討 採取した肝臓組織から総タンパク質を抽出し,シグナル認識に関わる分子であるNLRP3, NLRP1, NLRC4, AIM2をウエスタンブロッティング法により検出し,経時的変化を検討する.さらに,採取した肝臓組織からsingle cell suspensionを作製してフローサイトメーターにより,NLRP3, NLRP1, NLRC4, AIM2またはカスパーゼ-1の活性化が認められる細胞を同定する. 2.上記の実験成果に基づき,マウスアセトアミノフェン肝障害特異的に活性化されるインフラマソームを見出す. 3.研究計画を鋭意継続するとともに,実際の法医実務において薬物中毒と診断された事例について,各臓器を採取し,ヒトインフラマソームの態様を遺伝子及びタンパク質レベルで検討する.それらの結果を実験動物を用いた解析と比較,検討し,法医実務に応用可能か否かについて評価する.
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