2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性の病いにおける「言いづらさ」を包摂する看護理論の事例研究法に基づく実証的研究
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20K10636
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
黒江 ゆり子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (40295712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寳田 穂 武庫川女子大学, 看護学部, 教授 (00321133)
藤澤 まこと 岐阜県立看護大学, 看護学部, 教授 (70336634)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性の病い / 関節リウマチ / 看護実践 / 事例研究法 / 言いづらさ / クライアント領域 / ナース・クライアント領域 / 実践領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、令和2年度の専門家会議をふまえ、4月と6月にRAチーム会議を開催し(関節リウマチのケアを専門とする大学教員2人、慢性の病いのケアを専門とする大学教員3人)、その後10月と3月(令和4年)に専門家会議(リウマチケア看護師3人、関節リウマチのケアを専門とする大学教員2人、慢性の病いのケアを専門とする大学教員3人)を開催した。感染状況を鑑み、全ての会議をWeb会議とした。 RAチーム会議においては、関節リウマチにおける医学的治療方針、及びケアに関するEULARリコメンデーションについて、関連文献をふまえて研究者相互で共有を行ない、10月以降の専門家会議の進め方について討議を行った。10月の専門家会議においては、実践領域モデルのフェーズa及びフェーズbと関連させ、病いの‘慢性性’及び‘言いづらさ’に関する自己の体験についてディスカッションを行った。参加者の語りを記述し、そこから関節リウマチとともに生きる人々の思いと‘言いづらさ’、及びそれに対応する看護職の認識等を描き、どのような思い、‘言いづらさ’、看護職の認識があるかについての探求をすすめた。 その結果、クライアント領域では、「仕事を続けるためのアピール」「自分のことを語る場がない」「治療の経費に関する不安」等、ナース・クライアント領域では、「その人の人生の語りを聴く」「日常生活について具体的に聴く」「痛みや苦しみを解り得ない苦しみ」等、及び実践領域では、「医師と患者の橋渡し」「躊躇のなかでの多様な対応」等が示された。これらの内容については、今後も検討することとした。 また事例研究法における分析方法について、これまでの報告を調査し、LS.Greenbergの課題分析(task analysis)およびRE.Boyatzisのテーマティック・アナリシス法(thematic analysis)が用いられていることを明確化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画は、専門家会議を継続的に開催し、「言いづらさ」を包摂した看護理論の目的・構成及び実践領域モデルの内容について共有し、諸フェーズに沿った実践のための基盤を整えることであった。さらに、事例研究法(case study research)について、看護実践事例の事例研究法の在り方に関する知見を深めることであった。 専門家会議は、感染症状況を鑑み、Web会議として2回開催し、その準備のためにRAチーム会議を2回開催した。RAチーム会議は、慢性の病いとともにある人々(関節リウマチ、糖尿病、精神障がい)へのケアのあり方に関わっている大学教員による会議を開催し、関節リウマチにおける医学的治療の特性、ケアに関する指針とも言えるEULARリコメンデーションについて共有した上で、慢性の病いにおける「言いづらさ」を包摂した看護理論の特性、及び専門家会議の進め方を討議した。専門家会議では、関節リウマチケアのケア提供に関わっている看護職者(リウマチケア看護師)3人及び上記大学教員による会議を開催し、関節リウマチを含む病気の慢性状況において人々が抱く思いなどに関する状況共有、及び慢性の病いに関する自己の体験と認識についてディスカッションを行い、次年度の研究活動の進め方について検討を行った。これらにより、今後の研究活動に繋げることが可能となった。 さらに、事例研究法については、事例に関する諸データをどのように分析するかという分析方法に焦点をあて、実際の事例研究報告で用いられている分析方法を確認し、用いられている分析方法にLS.Greenbergの課題分析(task analysis)およびRE.Boyatzisのテーマティック・アナリシス法(thematic analysis)があることを確認し、あり方の探究を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、令和3年度で実施した専門家会議をふまえ、継続的に専門家会議(リウマチケア看護師3人、関節リウマチのケアを専門とする大学教員2人、慢性の病いのケアを専門とする大学教員3人)を開催する。年度の前半(4-9月)はWeb会議とし、年度の後半(10-3月)は感染状況を確認しながら可能であれば対面会議あるいはハイブリッド会議(対面会議とWeb会議の同時進行)とする。 専門家会議においては、実践領域モデルのフェーズc及びフェーズdと関連させながら、「言いづらさ」をふまえて‘語りを聴くこと’に関する姿勢と実践についてのディスカッションを行う。参加者の語りを記述し、関節リウマチにおける人々の思いと‘言いづらさ’、及びそれに対応する看護職による実践エピソードを可視化して描き、関節リウマチとともに生きる人々の思いや‘言いづらさ’の存在、そのような思いや‘言いづらさ’に対応した看護職者のケア提供、そしてケアはどのように変化していくか等について探求する。これらのプロセスで明らかになった事柄をまとめて報告し、多くの看護職との意見交流を行う。 また、事例研究法を基盤とした報告に用いられている分析方法について、これまでの報告から焦点化されたLS.Greenbergの課題分析(task analysis)およびRE.Boyatzisのテーマティック・アナリシス法(thematic analysis)について検討を深め、それぞれの特性を明確にするとともに、事例研究法においてどのような分析方法が可能であるか、及び慢性看護領域の実践活動における質的記述的事例研究の分析方法のあり方について思索を深める。
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Causes of Carryover |
令和3年度においては感染症対応により、対面での専門家会議の開催、海外専門家との直接的意見交流などが困難であったため、代表者の所属大学のWeb環境を活用することでZoom会議を開催することとした。 令和4年度は、専門家会議としては、年度前半はWeb会議(1~2回)(研究協力者のWeb会議参加謝礼)、年度後半は感染状況を確認した上で可能であれば対面会議あるいはハイブリッド会議(対面会議とWeb会議の同時進行)(2回)を開催する予定である(岡山開催1回及び名古屋開催1回、会議室費用:ハイブリッドでの会議が可能な施設、参加者の各交通費:福岡・埼玉・岐阜・奈良・大阪・京都と会場との往復等、研究協力者の会議参加謝礼)。また、専門家会議での語りを分析することにより(データ入力人件費)得られた知見を学会及び論文で報告する予定である(学会参加費、現地での報告の場合は旅費・宿泊費)。 さらに、慢性領域の看護実践における質的記述的事例研究の分析方法に関する諸書籍を踏まえ、分析方法のあり方について思索を深める。
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