2022 Fiscal Year Research-status Report
漢方医学による“整膚”は末梢血液循環を促進し皮膚保湿効果をもたらすか
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20K10641
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Research Institution | St. Catherine University |
Principal Investigator |
岡田 ルリ子 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 教授 (00233354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 里美 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 講師 (30558507)
森 敬子 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 助教 (40795431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 整膚 / 角層水分量 / 皮膚血流量 / 皮膚バリア機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚最外層の表皮角層は、外界からの刺激や体内水分の漏出を防ぐバリアとして機能する。このバリア機能維持には、角層に一定の水分が保持される必要がある。我々は、片側手浴で対側前腕の水分増加と皮膚血流の一時的増加を確認した。これは、手部温熱刺激が全身の皮膚血管拡張をもたらし、汗腺・角質細胞間へ水分を供給したためと解釈した。 一方、漢方医学の“ 整膚” は、施術者が受術者の皮膚に一定の力学的刺激;按摩のような皮膚を「押す」ものではなく、「ひっぱる」という陰圧刺激で、整膚部位の皮下脂肪と筋肉組織の間隙を広げ、組織の血管拡張をもたらし血液循環を促すと考えられ、冷え性者にも施術される。 本研究は、この整膚が「末梢血液循環を促進し表皮角層を保湿する」との仮説を立て、我々が確立したプロトコルを用いて、整膚の保湿効果を検証することを目的とする。 2021年度は、2020年度と同様、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、被験者候補である自大学学生の確保ができず、実験を断念した。 2022年度は、新型コロナウイルス感染症が減少した時期に、プレ実験として、皮膚疾患のない成人女性2名を対象に、整膚を片側手指~前腕に5分間実施し(control群は整膚を無実施)、皮膚角層の保湿状況<皮膚水分分布・形態測定装置、角層水分量計による>と血液循環<皮下血流量計、皮膚表面温度計による>を非施術側前腕で観察した。その結果、わずかに末梢血液循環は上昇したものの、保湿効果は得られなかった。次に、別の成人女性1名を対象に、両側の手指~前腕に各5分間(計10分)整膚を行い、同様の実験を行った。各計測は、右側前腕上側とした。その結果、末梢血液循環の明らかな上昇が認められたが、保湿効果は一時点で観察されたのみであった。2023年度は、実験方法を改善し、整膚による夏季(冷房環境下)と冬季の保湿効果を確認していくこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、自大学学生を被験者とする予定であったため、2022年度も新型コロナ感染症拡大により被験者確保が難しい状況が続いた。2023年3月に感染状況が改善されたことから被験者を募ったが、3名しか確保できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2023年3月に感染状況が改善されたことから被験者を募ったが、3名しか確保できなかったため、これをプレ実験に位置付け実施した。 上記の結果、整膚は両側前腕に行う方が末梢循環促進効果が高いことが観察されたため、実験方法を改善して2023年度の実施につなげていくこととする。今年度が延長後の最終年度であるため、皮膚疾患のない成人男女20名程度に、両側前腕~手指への整膚を各5分ずつ実施し、皮膚角層の保湿効果(皮膚水分分布・形態測定装置、角層水分量計による)と血液循環(皮下血流量計、皮膚表面温度計による)を観察する。測定部位は、右側前腕上側とする。 今年度は、感染予防対策を十分に行った上で、夏季(冷房環境下)と皮膚乾燥が進む冬季に同じ被験者に、以上の実験を行い、整膚の皮膚保湿効果を確認する所存である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大により、自大学学生の被験者が3人しか確保できず、十分な実験が行えなかった。このため、実験にかかる物品代や謝礼等を使用できず残額が生じた。
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